研究課題/領域番号 |
17K13837
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
苗 馨允 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 助教 (60749414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国の会計制度 / 制度の補完性 / 国際会計基準 / 公正価値会計 / コンバージェン / 任意適用 / 強制適用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国をケースとして国際財務報告基準(IFRS)の適用に伴うコンフリクト及び会計システムの多様性を解明することである。 平成30年度(第2年度)では、平成29年度(第1年度)の研究成果を踏まえ、中国における金融商品の測定を巡る国際会計基準(IASとIFRSを指す)の導入に焦点をあてて、国際会計基準と中国固有の制度環境との間の相互的、補完的かつ複雑な関係を明らかにした。具体的には次の調査を行った。まず、中国において金融商品に関する会計の変革を引き起こした国際的要因と国内的要因を解明した。次に、金融商品の公正価値による測定に対する中国の会計基準設定に関与するステークホルダーの見解を精査することによって、1990年代後半に公正価値会計の採用に対してステークホルダーからの強力な支持があったということを明らかにした。さらに、それらの支持を得たにもかかわらず、中国財政部が2000年代初めに公正価値会計を採用することができなかったということも解明した。最後に、1990年代後半から2000年代前半にかけての中国の経済、組織、職業、政治、会計関連の文脈の主な特徴を調査することにより、中国における公正価値による測定の適用を制限した環境要因を明らかにした。 さらに、日本とオーストラリアをケースとして、IFRSの任意または強制適用による影響を明らかにするための研究も行った。中国、日本、及びオーストラリアはIFRSの適用に対してコンバージェンス、強制適用、及び任意適用という異なるアプローチを採用しているため、これらの国を対象とする研究はIFRS適用に伴うコンフリクト及び会計システムの多様性についての多角的な洞察を与えることができると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度の文献調査を踏まえ、中国の会計制度の主な改革の1つである公正価値会計の採用について、1990年代後半から2000年代前半までの会計制度の変遷を中心に、改革を引き起こした周辺制度の変化、中国財政部による対応、及び公正価値会計と周辺制度とのコンフリクトを明らかにした。 さらに、IFRSの適用に伴うコンフリクト及び会計システムの多様性をより多角的に考察するために、日本とオーストラリアにおけるIFRSの任意適用と強制適用による影響をも調査した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。1.平成29年度と平成30年度の研究成果を踏まえ、中国における公正価値会計の適用についてはより長い期間にわたる改革と変遷を明らかにする予定である。2.日本とオーストラリアにおけるIFRSの適用による影響については追加分析を行う予定である。3.研究成果を国内及び海外の学会で報告する予定である。4.それらの学会で得られたコメントを反映させる修正を行い、国内外の学術誌に投稿し、最終成果を広く社会に発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由と使用計画は次の通りである。1.IFRSの適用による影響を調査するために、国際会計に関連する最新の文献を購入する予定である。2.研究成果を国内及び海外の学会で報告するための旅費に助成金を使用する予定である。3.研究成果を広く発信するために、学術誌に投稿する際の英文校正に助成金を使用する予定である。
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