研究課題/領域番号 |
17K13839
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木村 豊 筑波大学, 人文社会系, 研究員 (70769059)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市 / 戦争災害 / 集合的未来 / 民間防衛 / 社会学 |
研究実績の概要 |
本年度は、都市における戦争災害の集合的未来を比較分析するための本研究全体の枠組みを再検討するとともに、本研究の中心的な調査研究を進めた。特に本年度進められた調査研究は、次の5点である。 第一に、前年度に引き続き、本研究全体の枠組みとなる未来に関する社会学的な記述分析の枠組みについて再検討した。特に、未来論と社会調査論に関する海外の研究動向について検討した。第二に、前年度に引き続き、第二次世界大戦期における東京の民間防衛に関する資料の収集・整理・分析を進めた。特に、申請者がこれまで進めてきた日本の戦争災害に関する研究の中で、国立国会図書館・国立公文書館・東京都公文書館において収集された東京の民間防衛に関する資料を整理・分析する作業を進めた。第三に、第二次世界大戦期および冷戦期におけるニューヨークの民間防衛に関する資料の収集・整理・分析を進めた。特に、前年度、ニューヨーク市歴史協会・ニューヨーク市立図書館・ニューヨーク市公文書館において収集されたニューヨークの民間防衛に関する資料を整理・分析する作業を進めた。第四に、東京においてフィールドワークを行い、上記調査で得られた資料に基づきながら、現地調査を進めた。特に、歴史資料内に記されている場所を歩きながら、防空壕などを中心に第二次世界大戦期につくられた民間防衛体制の痕跡に関する調査を進めた。第五に、以上の調査で得られた資料を整理・分析するとともに、これまで進めてきた日本の戦争災害に関する調査で得られた資料と重ね合わせ、都市における戦争災害の集合的記憶と集合的未来の関係について検討した。 そして、調査で得られた資料全体を整理するとともに現時点での暫定的な分析を進め、その成果の一部を学会で報告するとともに論文として学会誌に投稿する準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究計画の2年目にあたる本年度は、計画していた通り、本研究の中心的な調査研究を進めることが出来た。その内容として、次の5点が挙げられる。 第一に、前年度に引き続き、社会の中で予期される戦争災害について研究するための枠組みの検討として、未来に関する社会学的な研究の枠組みについて検討した。本年度は特に、未来論と社会調査論に関する海外の研究動向について取り上げ、社会学はいかに未来を記述分析することができるのかについて検討した。第二に、前年度に引き続き、第二次世界大戦期における東京の民間防衛に関する調査として、歴史資料の収集・整理・分析を行った。それによって、東京の民間防衛の体制がつくられる中で、いかに未来の戦争災害が予期されていたのかについて検討した。第三に、前年度に引き続き、第二次世界大戦期および冷戦期におけるニューヨークの民間防衛に関する調査として、歴史資料の収集・整理・分析を行った。それによって、ニューヨークの民間防衛の体制がつくられる中で、いかに未来の戦争災害が予期されていたのかについて検討した。第四に、民間防衛に関する現地調査として、東京においてフィールドワーク調査を行った。それによって、予期される未来の戦争災害に対して都市の空間はいかに対応しようとしていたのかについて検討するとともに、そうした民間防衛の痕跡が現在いかに残されているのかについて検討した。第五に、以上の調査で得られた資料を集合的未来の観点から検討するとともに、これまで進めてきた日本の戦争災害に関する調査で得られた資料と重ね合わせ、都市における戦争災害の集合的記憶と集合的未来の関係について検討した。 そして、調査で得られた資料全体をとりまとめながらその分析を進め、成果の一部を学会で報告するとともに学会誌に投稿する論文の準備を進めた。以上の点から、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後(3年計画の3年目)は、1・2年目に進めた調査研究の成果を踏まえて、本研究全体の取りまとめを進めていく。具体的には、次の5点において調査研究を進めることを予定している。 第一に、都市における未来の戦争災害を比較分析するための枠組みの再検討として、時間論と社会調査論に関する海外の研究動向を検討する。3年目は特に、1・2年目の調査で得られた具体的な資料をもとに、集合的未来を分析する手法について再検討する。第二に、2年目に引き続き、第二次世界大戦期における東京の民間防衛に関する調査として、歴史資料の収集・整理・分析を進める。3年目は特に、東京の各文書館において調査を進めるとともに、それによって得られた資料の整理・分析を進める。第三に、2年目に引き続き、第二次世界大戦期および冷戦期におけるニューヨークの民間防衛に関する調査として、歴史資料の収集・整理・分析を進める。3年目は特に、1年目にニューヨークの各文書館において行った調査で得られた資料の整理・分析を進める。第四に、東京において民間防衛に関するフィールドワーク調査を進める。3年目は特に、歴史資料に記された場所を訪れるとともに、そこに残されている民間防衛の痕跡に関する調査を進める。また、必要に応じて、東京・ニューヨーク以外の地域において民間防衛に関するフィールドワーク調査を進める。第五に、以上の調査で得られた資料を整理・分析するとともに、これまで進めてきた日本の戦争災害に関する調査で得られた資料と重ね合わせ、都市における戦争災害の集合的記憶と集合的未来の関係について検討する。 そして、調査資料全体の分析を進めながら、その成果を学会で報告するとともに学会誌に論文を投稿する。3年目は特に、2つの都市における戦争災害の集合的未来の差異についての詳細な分析を進め、随時学会発表および論文投稿を行う予定である。
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