本年度は、これまで収集してきた調査資料の整理・分析を進めるとともに補足的な調査を行い、本研究全体のとりまとめを行った。 まず、1・2年目に検討してきた調査・分析手法と集合的未来論をもとに全体的な研究の枠組みを再検討した。またそれと同時に、社会学の中でこれまでどのように未来が論じられてきたのかについて検討し、社会学における本研究の位置づけを再検討した。そして、1・2年目に得られた具体的な調査資料と突き合わせながら、都市における未来の戦争災害イメージについて比較分析するための本研究全体の枠組みを再検討した。 それから、本研究期間中に得られた調査資料を整理するとともに、東京において第二次世界大戦期の民間防衛に関する補足調査を行い、それによって得られた資料の分析を進めた。またそれと同時に、追加で群馬・愛知・広島においても第二次世界大戦期の民間防衛に関する補足調査を行い、それによって得られた資料の分析を進めた。そして、上記の研究枠組みに基づきながら調査資料全体を通して都市における未来の戦争災害イメージについての包括的な分析を進め、学会発表および論文の投稿を行った。 本研究では、3年間の研究期間全体を通して、主として東京とニューヨークの両都市における未来の戦争災害イメージの特徴を明らかにした。その中では特に、第二次世界大戦期における東京の民間防衛体制が共同性に重きを置いてつくられていたのに対して、第二次世界大戦期および冷戦期におけるニューヨークの民間防衛体制は公共性に重きを置いてつくられており、両都市においてそうした民間防衛体制と未来の戦争災害イメージが相互に影響を及ぼしていたことが明らかとなった。またそれによって本研究では、社会学において未来について記述分析することの可能性に関する示唆を得ることができた。
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