研究課題/領域番号 |
17K13842
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
根本 雅也 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (00707383)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原爆 / ヒロシマ・ナガサキ / 戦争の記憶 / 東南アジア / 被害と加害 |
研究実績の概要 |
本研究は、暴力の記憶のグローバル化の可能性と境界について探るため、東南アジア諸国における、広島・長崎への原子爆弾の投下及びその惨禍に対する意味の諸相を明らかにする。そのために、まず(a)海外にて原爆展などを開催する日本の関係団体を対象として、世界に発信されている原爆の惨禍の意味について検討する。その上で、(b)日本による占領統治を経験したシンガポール、(c)第二次大戦後にジェノサイドを経験したカンボジア、(d)現在も武力紛争を経験するフィリピンに焦点を当て、関連する事例をもとに、これらの国々で原爆投下とその惨禍がどのように記憶されているのかを探る。 初年度となる平成29年度は、原爆による惨禍やその後の復興がどのように世界に伝えられているのかを探るため、日本を拠点として東南アジアを含めた国外で原爆展などを開催し、原爆被害やメッセージを伝えている団体を調べ、そのうちいくつかについて重点的に調査を実施した。広島県広島市の調査では、ボランティアでの原爆展を世界各地で推進しているJICA(国際協力機構)の広島県デスク、広島の市民団体で国際協力・平和教育を推進しているANT-Hiroshima、カンボジアにある「ひろしまハウス」の設立や運営に関わっているひろしまカンボジア市民交流会について調べた。これらの団体の活動や原爆に対する考え方を理解するため、資料収集及び関係者への聞きとりを実施した。 また、ポルトガル・リスボンで行われたEuropean Association for Japanese Studiesの国際会議に参加し、第五福竜丸の水爆実験被災の影響を探るパネルでディスカッサントを務めたほか、関連するパネルに参加し、研究者と交流した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、暴力の記憶のグローバル化の可能性と境界について探るため、東南アジア諸国における、広島・長崎への原子爆弾の投下及びその惨禍に対する意味の諸相を明らかにする。そのために、(a)海外にて原爆展などを開催する日本の関係団体を調べ、その上で(b)シンガポール、(c)カンボジア、(d)フィリピンにおいて原爆投下とその惨禍がどのように記憶されているのかを探る。 平成29年度は、上記(a)に特に焦点を当て、広島県広島市を中心として関係団体についての資料収集やインタビューを実施した。また、ポルトガル・リスボンで行われたEuropean Association for Japanese Studiesの国際会議に参加し、第五福竜丸の水爆実験被災の影響を探るパネルでディスカッサントを務めたほか、関連するパネルに参加し、研究者と交流した。 当初は年度の後半でシンガポールに滞在して調査を実施する予定であった。しかし、アメリカで行われる学会に参加・発表することとなり、ゆとりのある調査日程が組めなくなったことから調査を翌年度に繰り越すことにした。このような予定の変更はあるものの、研究としては概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の計画に大幅な変更はなく、今後も上記(a)~(d)について引き続き調査研究を実施していく。平成30年度には、平成29年度中に実施できなかった(b)シンガポールでの調査を行い、特に現地における日本軍による占領の表象を探るとともに、原爆投下に関する教科書の記述について調べていく。また、(a)として長崎を訪れ、関連する団体の調査についての資料収集と聞きとりを行う。そして年度の後半には(d)フィリピンを訪れて、現地で行われた原爆展の様子などについて探ることにしたい。 他方、それまでの調査研究をもとに、その成果を発表したいと考えている。現時点では、2018年秋にインドネシアで行われる日本研究学会(JSA-ASEAN)においてこれまでの成果を発表するため、応募を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は年度の後半でシンガポールに滞在して調査を実施する予定であった。しかし、アメリカで行われる学会に参加・発表することとなり(特別研究員奨励費)、ゆとりのある調査日程が組めなくなったことから調査を翌年度に繰り越すことにした。
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