本研究の目的は、大阪の地方自治と住民投票を事例として、有権者の「直接民主主義」へのまなざしとその変化のメカニズムを総合的に解明することである。近年日本では、地方自治を中心に、有権者に具体的な政治的争点についての民意を直接問う、住民投票の実施例が増加している。また国政でも、2016年7月10日の第24回参議院議員通常選挙の結果、改憲勢力が議席の2/3を超えた為、憲法改正の是非をめぐる国民投票の将来的な実施可能性が高まっている。したがって住民投票や国民投票のような、いわゆる「直接民主主義」の実態解明、具体的には住民投票の実証研究(有権者の投票行動の規定要因分析)が、政治社会学の重要課題といえる。そして近年の住民投票のうち最も社会的関心が高かったのは、大阪の地方自治における事例である。2015年5月17日実施の大阪都構想の是非(大阪市区廃止と5特別区新設)をめぐる1回目の住民投票では、反対が賛成を僅差で上回り、大阪都構想を推進する橋下徹や大阪維新の会など維新陣営が敗北した。しかしその後2015年11月22日実施の大阪市長・府知事選挙では、再び大阪都構想を公約に掲げた維新陣営が勝利した。さらに2020年11月1日実施の2回目の住民投票では、前回同様に反対が賛成を上回り、再度維新陣営が敗北した。このように有権者の投票行動は複雑だが実証研究は十分とはいえない。そこで研究代表者は、近年の直接民主主義の典型例として大阪の地方自治と住民投票を取り上げ、その実態解明を行う。 2020年度は、2020年11月1日実施の2回目の住民投票にあわせて、調査会社のモニター登録者対象の郵送社会調査を実施した。10月頃より調査会社と打ち合わせを行い、調査票を完成させた。実査とデータ入力は2021年1月末までに実施完了・納品され、現在クリーニング作業中である。今後は引き続きデータ分析を進めていく予定である。
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