本研究の目的は、公共事業等の開発によって漁場が失われた経験から、地元が生み出してきた環境保全型地域づくりの論理を社会学的モノグラフを通じて明らかにすることであった。 地元の環境保全型地域づくりの土台には、自然の微細な変化を察知する経験知がある。事例地ではこうした経験知をもつ人が、地元をまとめ、国や県との交渉をおこなってきた。この経験知は地元の者同士でも簡単に伝えられるものではなく、当然国や県との交渉においては説得力を持ちにくい(科学的説明ができないため)。そのなかで、どう地域をまとめ、外部と交渉し、漁場を残してきたのかという点を意識し、今後も調査をすすめ、社会学的モノグラフの完成を目指したい。
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