研究実績の概要 |
本研究は、「包摂/排除」概念を中心とした理論研究と、ドイツにおける移民支援の実態調査とを両輪とし、それらの相互発展的な検討を行うものである。最終年度にあたる本年度は、研究成果の発信と今後の研究への発展的な橋渡しに取り組んだ。成果発信としては、6月に、社会学では最大の学会である国際社会学会(ISA)世界大会(於:オーストラリア・メルボルン)で研究論文報告を行った(“Complex, Dynamic, and Sensitive: Street-Level Bureaucracy As a Reflexive Contact Zone”)。また、本研究の理論的中心であるN.ルーマンの社会理論と、ドイツの思想家E.ブロッホの希望論を関連づけて考察した論考を9月に発刊した(「希望の語り方ーE.ブロッホ『希望の原理』と「他でもあり得る」現実の行方」『地方創生の希望格差:寛容と幸福の地方論Part.3』LIFULL HOME'S総研編)。同じく9月に、ドイツ学術交流会のフォーラムにて「『移民による移民支援』と自治体行政の役割」を報告した。報告をもとに執筆したものが同フォーラムの論集に収録された(「ドイツの移民統合政策は自治体でどのように受け取られ遂行されたのかーミュンヘン市を事例に」『DAADアルムニ・フォーラム2023論集』)。研究期間の全体を通して、ドイツにおける「移民による移民支援」の都市間比較や、「ポスト移民社会」における文化政策の役割など、近年の動向を踏まえた現地調査に着手した。また期間中に二回開催された国際社会学会の世界大会では、空間論や官僚制論など、国際的に問い直しが進む切り口から検討し、いずれの参加時にも有意義な研究ネットワークを得ることができた。全体を通して、後続の科研費課題研究(23K12602)につながる建設的な基盤を得ることができた。
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