研究課題/領域番号 |
17K13848
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松木 洋人 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (70434339)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不倫 / 浮気 / 歴史社会学 |
研究実績の概要 |
2018年度は、新聞記事を資料とした分析の成果を、2本の研究論文として投稿した。 そのうちの1本は、2018年度発行の『比較家族史研究』33号に研究ノートとして掲載が決定されている。 この論文は、新聞紙上における人生相談に対する回答を題材として、配偶者の婚外性愛について語るという実践が、どのような結婚と性愛をめぐる規範的論理によって可能になっているのかを例証することを試みたものである。その結果として、以下のことが明らかになった。まず、性愛と結婚を結びつけるロマンティック・ラブ・イデオロギーは、相談者による配偶者の非難を可能にする一方で、「正しさ」を欠いた結婚の解消を回答者が説くうえでも用いられる。それに対して、この結びつきを前提として、個別的に婚外の関係が「真剣」か否かを区別する「浮気の論理」を用いること、さらには、配偶者が「真剣」な「不倫」関係にある場合でも、原理的に夫婦であることと性愛の結びつきを切断することを通じて配偶者の「不倫」と自分の人生を無関連化することによって、離婚を勧めるのではない回答が現代の日本社会では可能になっている。このような記述は、あくまでそれぞれのテクストが生み出したり理解したりする人々による規範の用法を例証するものであって、日本社会におけるロマンティック・ラブ・イデオロギーの通時的な変化を俯瞰するものではもちろんない。とはいえ、結婚と性愛を排他的に結びつける規範を用いる限り論理的に直面しうる離婚の勧めという帰結に対して、現代においては、2通りの方法を用いて、それとは異なる回答が行われうるという知見は、婚外性愛を語るという実践において結婚と性愛をめぐる規範的論理を人々がどのように用いているのかについて、現状の一端を明らかにするものである。 なお、もう1本の論文は掲載不可となったので、さらに改稿のうえ、発表に向けて作業を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新聞記事を資料とした分析の成果を論文化することはできたが、そのうち1本は成果を公刊することができなかった。また、Web OYA-bunkoを使った雑誌記事収集に着手したものの、その作業を終わらせることができず、したがって、分析作業を開始することもできなかった。さらに当初に予定していた戦前の姦通関連の古書の収集も開始することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
掲載不可となった新聞記事を分析した論文を、以前に投稿した際に得た査読コメントを参考にして改稿のうえ、公刊することを目指す。また、Web OYA-bunkoを使った婚外性愛に関する雑誌記事の収集作業を終了させて、その分析にもとづく論文を完成させる。さらに、戦前の姦通関連の古書の収集も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集作業が進まなかったので、その分を2019年度に持ち越した。
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