研究課題/領域番号 |
17K13849
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
石井 由香理 東洋大学, 社会学部, 助教 (90788431)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 性別違和 / クロスドレッサー / 女装者 / 女装者愛好男性 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究活動については、アウトプット、新たな研究データの収集の両面について、十分な成果をあげることができた。まず、前年度までの大阪市でのフィールドワークや聞き取り調査から得られた研究成果、女装者や女装者愛好男性の居場所とまちづくりの関係性について、論文にまとめて国際誌に掲載されるに至った。異性装者や女装者愛好男性に関しては、国際的にもあまり着目されてこなかった存在であり、かれらの居場所や困難性についてもほとんど言及されてこなかった。したがって、論文を通じて、本研究で対象とした事例が国際的に認識される意義は大きい。また、大阪市で行ってきた調査に関して、新たに近隣地区までエリアを広げ、今まで軽視されてきた女装者の貧困問題についてより深く調査を行った。参与観察の結果、経済的困難性を抱えている女装者については、その深刻度がより高まるという知見が得られている。新たなエリアでの参与観察に関しては、これまでの研究をさらに発展させる可能性が大いにあり、主に2020年度より開始される別課題に引き継いで研究を継続したい。本研究で得られた知見である、当事者たちの経済的・社会的困難性の実状とそれを覆い隠す人々のアイデンティティ認識の関係性、公的支援の不足については、2019年度の国内学会でも報告を行った。今後、2019年度までに行われた調査で得られた知見に関しては、データの分析、考察を進めて、論文の形で、成果の公表を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べた通り、2019年度の研究活動については、アウトプット、新たな研究データの収集の両面について、十分な成果をあげることができている。アウトプットについては、著名な出版社の査読付き国際誌に掲載されるに至った。ここに至るまでには、対象者、共著者、査読者の先生など多くの人たちの協力をいただいたことを合わせて報告させていただく。また、対象者、対象エリアについても、研究目的に沿った形で、順調に広げることができている。特に、関西大学の宮田りりぃ氏の貢献は大きく、対象者の方たちに安心・信頼して話をしてもらう体制づくりができているのも氏のおかげである。フィールドワークで得られた知見に関しては、当初想定していた以上の成果が得られており、特に、隠れた社会問題について言及できた意義は大きい。今後は、これまでに得られた知見に関してアウトプットする作業が必要になってくる。アイデンティティと経済的な困難性についての論文を執筆していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】の末尾でも言及したように、今後の研究の推進方策としては、2019年度までに得られた研究のまとめをし、アウトプットすることが求められている。すでにエントリーをし、2020年度の国際学会などへの参加を予定していたが、新型コロナウィルスの影響等で、これに関しては開催がされるかどうかが危ぶまれているが、状況が落ち着き次第、研究期間の間で、報告できる学会、報告会があれば参加したい。また、論文に関しては、国際専門誌への投稿を目指す。2019年度までの研究成果をまとめ、すでに執筆を始めている論文があり、この論文をより読者の多い国際専門誌に投稿し掲載されることがひとつの目標である。そうする必要があると考える理由として、すでに述べた通り、異性装者の困難性についてはほとんど言及がなされてこなかったこと、実態把握もされず、なぜ困難性が不可視化されるのかのメカニズムについても明らかにされてこなかったことがある。本研究で得られた成果は、これらの点を明らかにするものであり、広く成果が公開される必要がある。また、本研究成果でより発展が望める調査に関しては、別課題の調査に引き続き研究を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールドワークを実施した結果、複数のアイディア、社会問題の発見がもたらされた。(1)女装者と都市の関わり、(2)女装者の孤独と居場所としての当事者イベント、そして、(3)女装者のアイデンティティと経済的困難性や生きづらさの不可視化についての問題である。1はすでに国際紙に掲載されているが、特に、2と3について、研究結果をまとめて国内の論文雑誌、及び、国際誌に掲載するために、事業期間の延長を申請する。
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