研究課題/領域番号 |
17K13851
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
税所 真也 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任助教 (60785955)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 成年後見制度 / 生命保険会社 / 生活協同組合 / 社会学 |
研究実績の概要 |
一年目となる平成29年度は,本研究課題である「成年後見制度がどのように広がり,それが人びとの生活にどのような影響を及ぼしているのか」を明らかにするため,「民間企業」と「生活協同組合」を分析視角として設定し,以下の研究課題に取り組んだ.まず民間企業については,生命保険会社を分析対象とし,本研究の一部を「成年後見の社会化に関する研究――生命保険会社における成年後見制度の位置づけとそのあり方」と題して,日本保険学会第72回全国大会にて発表した(滋賀大学,2017年10月29日).その結果,「2017年度日本保険学会ポスター優秀発表賞」を受賞した.つぎに,生活協同組合の視点から「成年後見の社会化」を捉える研究を進めた.その結果を以下の研究報告および基調講演として発表した. ①福祉クラブ生活協同組合・成年後見サポートワーカーズコレクティブあうん理事総会基調講演「成年後見と自己決定――生協の意思決定支援システムへの期待」(福祉クラブ生協本部きらり港北,2017年5月13日). ②一般財団法人地域生活研究所・2015年度一般研究助成成果報告「地域福祉における成年後見事業の可能性――生活協同組合による代替的価値創造の取り組みを通して」(東京都生協連会館,2017年6月22日). ③地域包括支援センター社会福祉士部会研修会主催,茅ヶ崎市福祉政策課・高齢福祉介護課・茅ヶ崎市社会福祉協議会共催,平成29年度地域包括支援センター社会福祉士部会研修会基調講演「市民後見に関するこれまでの流れとこれからの役割」(茅ヶ崎地区コミュニティセンター3階大会議室,2018年3月21日). 以上,民間企業である生命保険会社と生活協同組合の2つの立場から本研究課題である「成年後見の社会化」を検討した.また発表されたそれらの研究成果に対して一定の評価を得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り,概ね,順調に進んでいる. 本研究課題は,上述の通り,成年後見制度がどのように広がり,それが人びとの生活にどのような影響を及ぼしているのかを「成年後見の社会化」をキーワードとして明らかにすることである.それは成年後見制度の位置づけを,成年後見制度にかかわる諸アクターの視点から彫琢していくことでもある.成年後見制度の一般化において,民間企業が果たした役割は大きい.そこで本研究課題においては,まず民間企業として生命保険会社を取り上げ,生命保険会社における成年後見制度の実務上の扱いについて分析した.さらに,生活協同組合が取り組む成年後見事業についても取り上げた.そして「成年後見の社会化」という現象が,ある種の専門職化のもとで達成されたことを指摘し,脱専門家による実践活動として,生活協同組合が取り組む成年後見事業の可能性(市民後見の優位性)を検討した. 以上,生命保険会社と生活協同組合という2つの視点から取り組んだ本研究課題に対し,十分な進展から見られたこと,またそれらの研究成果に対して,学術的/社会的な見地から一定の評価が得られたことから,概ね,順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
成年後見制度が人びとの生活に大きな影響を及ぼすものである以上,生活者目線,あるいは人びとの生活実践のなかから捉えていく研究が求められている.よって,引き続き,フィールドワーク調査を中心において本研究課題を遂行していきたい. また,今後はとくに,地域福祉研究のなかから市民後見を捉え,新たな知見を導く研究に取り組んでいきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の前半期は,日本学術振興会特別研究員PDとして上智大学に所属していたが,後半期は,東京大学高齢社会総合研究機構に特任助教として着任した.このため,後期は授業準備等があり,当初予定していたフィールドワーク活動について研究計画を変更した.次年度は,初年度に計画していたフィールドワーク調査を含め,中国・上海での海外調査を予定している.
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