研究課題/領域番号 |
17K13854
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
昔農 英明 明治大学, 文学部, 専任講師 (20759683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移民統合 |
研究実績の概要 |
2017年度は、近年のドイツの連邦政府および地方自治体における移民・難民の統合政策の政策方針を分析したことに加えて、こうした政策方針に対して、移民団体がどのように対応を行っているのかを現地調査を踏まえて、予備的な分析を行った。 連邦および自治体レベルにおいて、2004年の移民法(移民制御法)成立以降、積極的に進められるようになった統合政策は、移民の受け入れ国の公用語の習得、職業教育・労働市場へのアクセスなど、移民の社会経済的権利の向上に寄与するものであり、ローカルな移民団体も、こうした政府の政策方針にそって、移民の統合を積極的に推進しようとしている側面が明らかになった。しかしながら、他方で政府の進める統合政策が、移民の非統合につながる問題性を同時に内包している点がみられ、移民団体においては、移民の権利向上の阻害となる問題や移民に対して差別的な視点を有するものとして、政府の統合政策に対して批判的な視点を有する団体も多くみられることがわかった。 こうした普遍的な価値を重要視する移民統合政策がもたらす逆説的な側面は、近年のシリア難民の受け入れがもたらす難民の統合の問題にも共通する点がみられることが、本年度の調査・分析からも次第に明らかになってきた。こうした分析を踏まえて、本年度の研究成果としては、たとえば、『三田社会学』などの査読付きの学会誌を含む、複数の学術誌に掲載されるなどの成果をあげたほか、共著書として学術本を出版するなどの成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、本年度は複数の学会誌に掲載されるなどの一定の成果を挙げることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以上のような研究結果を踏まえて、引き続き、移民統合政策がもたらす移民統合の政策課題を明らかにすることを進めるとともに、統合政策に対して移民団体や移民自身がどのような対応を行っているのかを明らかにしていく。とりわけ近年ドイツでは、普遍的な価値を重視する統合政策のもとで移民・難民に対する排外主義のうねりが強まっている側面が見られる。そうした点を中心に移民統合の実態を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画において支出予定であった旅費の支出を行うことができなかったため。
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