2019年度は、昨年度に引き続いて、第1に、ナショナル・レベル、あるいはローカル・レベルにおける移民統合の実態解明のための調査を実施した。第2に、このようなナショナル、ローカル・レベルに加えて、EUレベルを含めて、移民の統合と排除の現状とその論理を分析するべく、EU統合下における移民の管理とそれに対する抵抗や抗議運動の実際を明らかにするための研究も行った。 第1に関しては、本年度では、ドイツのヘッセン州、ならびにノルト・ラインヴェストファーレン州において現地調査を実施し、移民団体に対して、移民の社会・経済的な統合のための支援活動や、文化活動に関する聞き取り調査を実施したほか、複数の大学図書館において資料の収集もおこなった。 第2に関しては、EUでは、移民の管理において、生体認証技術を用いた電子的な管理が進行している。その一方で、こうした電子的な管理を構築に対して移民・難民が、さまざまな対立や抗議運動を活性化している現状を明らかにした。 上記のような調査・分析をふまえ、本年度の研究成果として、9月のドイツ現代史学会年次大会のシンポジウムにおいて報告を行った。この報告をふまえた論考は同学会の学会誌『ゲシヒテ』に掲載される予定である。さらに、昨年度までの研究成果を踏まえた論考を共著書として出版したほか、『大原社会問題研究所雑誌』においても論文が掲載されるなどの一定の研究成果をあげることができた。
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