研究課題/領域番号 |
17K13859
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
脇田 彩 立教大学, 社会学部, 助教 (00750647)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 職業威信スコア / 職業威信とジェンダー / ジェンダー・ステレオタイプ / 性別職域分離 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、職業威信に対してジェンダーが与える多様な影響を明らかにすることである。この目的を達成するために、人々の職業に対する評価と多様なジェンダー要因について量的社会調査を行い、そのデータを計量社会学的に分析する。2017年度は、調査全体のデザイン、および調査票の設計を行った。具体的には、以下の3点を行った。 第一に、これまでの調査を再分析し、2018年度に実施する量的社会調査の調査票に盛り込むべき項目を明らかにした。第二に、調査予算の配分、調査法、調査対象を決定した。第三に、質問項目を概ね選定した。 以上の成果の意義は、2018年度に職業評価調査を行い、本研究の目的を達成する準備をしたことにある。本研究の目的を達成することにより、ジェンダー要因が職業威信に影響する具体的なメカニズムを解明することが見込まれる。このメカニズムの解明は、階層研究とジェンダー研究という2つの不平等研究を架橋することに資する。また、本研究は、労働市場におけるジェンダー不平等が強い日本社会において、多くの職種に女性が進出していながら女性の職業的地位が向上しない理由を明らかにすることで、労働・福祉政策への提言にもつなげることができる。 また、これまでの調査の再分析を行ったことで、ジェンダー・ステレオタイプの職業威信に対する影響が確認されたが、同時にジェンダー・ステレオタイプ以外の職業の性質が職業威信の男女差と関連していることや、評定者の属性が職業威信に複雑に影響している、たとえば同性の評定対象をより高く評定するという「身内びいき」効果が見られることなども明らかになった。このことは、評定者と評定対象の性質の相互作用によって職業威信が形成される複雑なメカニズムがあることを示唆しており、重要な発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、調査全体のデザイン、および調査票の設計を行った。具体的には、以下の3点を行った。 第一に、これまでの調査を再分析し、調査票に盛り込むべき項目を明らかにした。過去に行われた職業威信調査を分析することにより、(1)評定者のジェンダー・ステレオタイプや同職業に就いている男女の職務の違いなどその他の要素と性別情報付きの職業威信を同じ回答者に尋ねる評価設計が必要であること、(2)性別情報を付した評定対象への評定を尋ねる調査票とまったく同じ職業について、同じ形式で性別情報なしの評定を尋ねる調査票を用意することが必要であることなどが明らかとなった。 第二に、調査予算の配分、調査法、調査対象を決定した。多様な地域に住む20-69歳男女を調査対象とし、性別・学歴・産業による割り付けを行うことなどを明確にした。A票で性別付き職業評定、B票で性別なし職業評定を尋ねるよう、調査対象を分けることを決めた。 第三に、質問項目を概ね選定した。主要な質問項目である職業に対する評価項目について、専門家の意見も聞いて複数案を検討し、評価対象となる職業の選び方、並べ方を決定した。すべての評価対象職業の表示順をランダムにし、職業の後ろに性別情報をランダムに付けることとした。また、その他に盛り込むべき質問項目、職業のジェンダー・イメージに関する項目、評価者の持つ一般的なジェンダー・ステレオタイプ、評価者の仕事の状況、評価者の主観的幸福や主観的健康、評価者の基本属性などを列挙した。 研究計画では、2017年度に調査全体のデザインと調査票の設計を行うとしており、この計画は概ね達成されたと言え、本研究はおおむね順調に進展している。ただ、調査票の完成のためには、質問項目の最終的な絞り込みおよびプリテストが必要であり、この最終段階は2018年度初めに行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
調査票の完成を2018年度初めに持ち越したとはいえ、本研究はおおむね順調に進展している。そのため、当初の計画通り、今後の研究を推進していく。ただし、2017年度に行ったこれまでの調査の再分析により、ジェンダー・ステレオタイプ以外の職業の性質が職業威信の男女差と関連していることや、評定者の属性が職業威信に複雑に影響していることが明らかになったため、これらの知見を活かしてデータ分析を進めていく。 2018年度には、調査を実施し、データを完成させ、データ分析を行う。2018年度初めに調査票を完成させ、調査会社に委託して標本抽出および実査を行う。実査終了後にデータのチェック、コーディング、クリーニングを行い、データを完成させる。データの完成後、分析を開始する。評定対象が男性の場合、女性の場合、性別情報がない場合の職業威信スコアを、それぞれ計算する。計算された職業威信スコアを、これまでに行われた性別情報のある職業威信スコアや、性別情報のない1995年SSM調査職業威信スコア、さらには科学研究費基盤(B)「雇用多様化社会における社会的地位の測定」による2016年版の職業威信スコアと比較する。 2019年度には、データの分析を終了し、分析結果を報告し、最終的な研究成果を報告する。評定対象および評定者の多様なジェンダー要因が職業威信に与える複雑な影響を、計量社会学的に分析する。階層線形回帰分析、構造方程式モデルなど、適切なモデルを用いた分析を行う。分析結果は国内外の学会で報告し、最終的な研究成果の発表に向けて国内外の専門家のコメントを得るようにする。研究成果は報告書にまとめるほか、研究成果に基づいて、「職業威信スコアに対する多様なジェンダー要因の影響」についての論文を執筆し、国内外のジャーナルに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
割引価格で物品を購入することができたため、少額ながら次年度使用額が生じた。2018年度には大規模な社会調査を行うため、多くの予算が必要である。とりわけ、多くの質問項目を調査票に取り入れるためには、調査会社への委託費用が多く必要である。次年度使用額は少額ではあるが、この委託費用を充実させるために用いることとする。
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