本研究の目的は、職業威信に対してジェンダーが与える多様な影響を明らかにすることである。本研究の目的を達成することにより、ジェンダー要因が職業威信に影響する具体的なメカニズムを解明することが見込まれる。このメカニズムの解明は、階層研究とジェンダー研究という2つの不平等研究を架橋することに資する。また、本研究は、多くの職種に女性が進出していながら女性の職業的地位が向上しない理由を明らかにすることで、労働・福祉政策への提言にもつなげることができる。この目的を達成するために、人々の職業に対する評価と多様なジェンダー要因について量的社会調査を行い、そのデータを計量社会学的に分析する。 2021年度は、引き続き2019年度に実施したインターネットによる量的社会調査「職業評価調査」データによる分析結果をまとめ、論文を執筆した。多様なジェンダー要因が職業威信に与える影響のうち、評定者の持つジェンダー・ステレオタイプの影響についての論文が雑誌に掲載された。また、評定者の属性の影響についての分析を進め、論文の執筆を行った。 分析の結果、職業威信を評定する者(調査回答者)が持つジェンダー・ステレオタイプが職業威信の評定に影響すること、具体的にはジェンダー・ステレオタイプに適合的な職業に就く者が高く評定されることが明らかになった。また、このジェンダー・ステレオタイプの影響には職業分類による違いがあること、とくに管理職については例外的に男性が多い職業にもかかわらず女性評定対象が高い威信を得る傾向が示された。また、評定対象のジェンダーを示した多様な職業タイトルについての職業威信調査を行った場合、評定者の様々な属性の影響が見られることも明らかとなった。
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