研究課題/領域番号 |
17K13863
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
大久保 遼 愛知大学, 文学部, 助教 (60713279)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視覚報道史 / 映像文化の社会学 / メディア考古学 / スクリーン・スタディーズ / メディア史 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、初期の視覚報道にかんする歴史研究を進めるとともに、本研究を遂行するための方法論を構築するための作業を進めた。特にメディアの歴史記述の視座としての「メディア考古学」、および「映像文化の社会学」の視点を引き継ぎながら、新しい映像分析の視座としての「スクリーン・スタディーズ」の検討を行なった。 前者については、2017年6月のカルチュラル・スタディーズ学会(早稲田大学)における報告「文化研究とメディア考古学:メディア概念の比較文化的検討へ向けて」、7月の「アジアの中の日本文化」第14回研究セミナー(名古屋大学)における報告「映像研究とメディア考古学」、12月の国際シンポジウム「日本のスクリーン・プラクティス再考:視覚文化史における写し絵・錦影絵・幻燈文化」(早稲田大学)での報告など、関連する研究発表を行なった。また後者については、若手メディア研究者の研究会において「ポスト・スマートフォンにおけるスクリーンの問題:What is Media Archaeology?とA Geology of Mediaの視点から」という報告を行うとともに、近刊の編著『スクリーン・スタディーズ』に掲載予定の論文に現在までの見解をまとめている。また、既発表の著作の一部と今年度の成果を合わせて、英語論文化した「Japanese Modernity and Media Studies of Screens」が『International Journal of Japanese Sociology』27巻1号に掲載された。こうした映像史・視覚文化研究のための方法論の探求は、具体的な歴史研究を進めていく上でも重要な役割を果たすものと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に使用する資料のほとんどが首都圏のアーカイブに保管されているため、歴史研究を本格的に遂行することにやや困難を抱えており、19世紀の視覚報道史に関わる新しい論文を年度中に刊行できなかった点は初年度の反省点である。しかしながら、その分、研究の方法論に関する口頭発表を集中的に行うとともに、新しい映像研究の論集刊行のための編集作業に傾注できた点については、想定以上の進展があった。また、国際シンポジウムの開催や英語論文の執筆は当初計画したものではなかったが、本研究を進めるために必要な視座を構築する上で、重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度までに進めてきた方法論の検討の作業を進め、映像の歴史研究および新しいメディア研究のための視座の構築に取り組む。その上で、改めて視覚報道の歴史研究を進め、とりわけ19世紀から20世紀初頭の版画・写真と報道媒体の関係についての論文の執筆を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際シンポジウムの広報チラシのデザイン謝金などが想定より安価で済んだため。今年度は予定通り、研究計画の執行のために使用する。
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