研究課題/領域番号 |
17K13863
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
大久保 遼 愛知大学, 文学部, 助教 (60713279)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スクリーン・スタディーズ / メディア考古学 / 映像文化の社会学 / 視覚報道史 / 映像メディア研究 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度に引き続き、新しい映像研究・メディア研究の方法としての「スクリーン・スタディーズ」の検討を進めた。これまでに進めてきた映像史の研究とメディア考古学の方法を踏まえ、デジタル化以降の変化に対応した映像研究の方法を素描した「スクリーン・プラクティスの再設計」を『ヱクリヲ』8号に寄稿。また前年度に『International Journal of Japanese Sociology』27巻1号 に掲載した英語論文「Japanese Modernity and Media Studies of Screens」の内容をベースに、2018年11月に来日したトマス・エルセサー氏(アムステルダム大学名誉教授)を招聘した国際ワークショップにおいて「Reconsidering Screen Practice in Japan」と題する報告を行った。両者で検討した方法やディスカッションの内容を発展させ、2019年1月には編著『スクリーン・スタディーズ:デジタル時代の映像/メディア研究』(光岡寿郎との共編・東京大学出版会)を刊行した。執筆を担当した第10章「スクリーン・プラクティスの再設計」および論集全体の総括に当たる「あとがきに代えて」では、近年の国際的な研究動向や新しい映像研究の方法を論じるとともに、具体的な事例の分析を行っている。また歴史研究の成果の一部は、2018年12月に開催された国際シンポジウム「声、動作、音楽:サイレント時代のフランスと日本における映画上映」における報告「弁士の身振り:連鎖劇、幻燈文化、弁論術との関連に注目して」や、『社会学評論』69巻2号に掲載の査読論文「感覚の理論と社会の理論」の中で発表した。今後はこうした歴史研究の成果と『スクリーン・スタディーズ』によって示された新しい視座を総合し、研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に歴史研究については、年度内に学会誌に投稿した論文が継続査読扱いとなり、投稿先を変更する必要が生じるなど、必ずしも順調に進展したとは言えない部分があった。しかしながら、新しい映像研究・メディア研究の方法については、先述した共編著『スクリーン・スタディーズ』を刊行することによって、明確な形で方向性を打ち出すことができた。この点は大きな成果であると言える。同書はデジタル時代の映像/メディア経験に焦点を当てているものの、同時代の映像分析のみならず、歴史研究の方法の再編を視野に収めており、その点でも研究課題を十分に進展させることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、編著『スクリーン・スタディーズ』で打ち出した新しい映像研究・メディア研究の方法を踏まえ、より具体的な事例の分析を進めていく。また新しい映像/メディア研究の方法を、これまでに進めてきた映像文化の歴史研究と総合していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアルバイト謝金を別の研究費から支出することが可能になったため、その分次年度使用額が生じた。今年度は研究計画に沿って執行することを予定している。
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