本研究における最終年度の研究計画としては、PANA通信社ネットワーク11か国のうち、新型コロナウイルスの感染拡大により現地調査できなかったインドネシア、フィリピン、スリランカ、インドの研究を追加的に行うことであった。諸般の事情により現地調査は実現できなかったが、文献調査、およびPANA通信社(東京)の元スタッフへの継続的インタヴューを行った。交付申請書に記載した目的・計画に照らすと以下の通りである。 (1)所属研究機関図書館のレファレンスサービスや「World Cat」、各国のインターネット・サーチエンジン、データベース等を利用し、当該国で刊行されたPANA通信社関連の書籍、記事、論文の所在について調査した。その上で、現時点で入手可能なものについては入手した。その他、日本国内で刊行された当該時期のアジア史に関する先行研究を収集し、読み込みを行った。 (2)当時の関係者やPANA通信社のOBとコンタクトを継続的に行い、公開情報からは得られなかった同社の業務実態や報道内容、人間関係などについても情報収集を行った。 研究機関全体としては、文献、写真、インタヴュー、手紙やメモなどの個人資料の収集を通じ、歴史の空白となっていた同社の歴史をかなりの程度明らかにすることができた。その成果は『PANA通信社と戦後日本――汎アジア・メディアを創ったジャーナリストたち』(人文書院)や「タイのPANA通信社とアレックス・ウー:外国特派員協会と華僑社会における位置づけを中心に」(『貿易風』中部大学国際関係学部)などに発表し研究成果を還元することができた。
|