共同体の成熟度を推し量るために、社会調査によって住民の社会関係資本を測定する試みが行なわれてきた。ただし、従来の社会調査で用いられていた意識項目では、人々の行動の実態を測定することはできず、社会関係資本を測定するうえでの妥当性に欠けると指摘されることもあった。この指摘に対応するため、前年度の研究では自発的な協力を要請される場面での、調査対象者の行動測定のための調査項目を考案した。それらの調査項目は行動的な側面を捉えるために、Web調査での運用を前提としたものであった。なお、Web調査では調査報酬目当てに不適当な回答を行なう、Satisfice行動(簡潔にいうと“手抜き回答”)の発生が懸念されている。その対策として、調査対象者のSatisficeの検知項目開発も実施して調査に導入することで、Satisficerの検知を可能とした。 最終年度となる2019年度は、上述した項目群を用いての本調査を実施した。調査対象者はWeb調査会社が保有する全国の20~69歳までの男女の調査パネルであった。加えて、地域間の異質性を検討できるように、同一郵便番号地点から5名以上の回収があることを回収条件として設定した。その結果、有効回収サンプルは4002、237地点(1地点の人数:5~25名)分のデータが得られた。さらに、Satisfice行動に関する分析を実施したところ、回収データの約2割に強いSatisfice傾向が認められた。そのため、以降は該当者を分析から除外する措置を施した。続いてハードルモデルなどの統計技法を用いて分析を行なったところ、居住地域の地域活動の活発度が高いほど、協力要請に応えて向社会的な活動に参加する傾向が確認された。また、他者に対する一般的信頼感が高い者ほど、向社会的な活動に強く関与する傾向が見られるなど、既存の知見を補強する興味深い結果を得ることができた。
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