研究課題/領域番号 |
17K13867
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
平山 亮 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10728075)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 家族介護 / きょうだい |
研究実績の概要 |
本年度は、正規雇用・非正規雇用の成人子を対象とした量的な社会調査から得られたデータの分析結果をまとめ、おもに国外の学会において発表した。特に焦点を当てたのは、本人の就労状況や家族の状況(配偶者の有無、扶養が必要な子どもの有無など)と、きょうだいのそれが相まって、本人による親の介護役割の予期やその主観的な遂行可能性にどのように影響するかである。それを分析することを通して、ともに親の介護にあたることになる可能性のあるきょうだいのネットワーク全体を視野に入れながら、親の介護に対する準備状況の個人差やそれが何によって生じているのかを、より詳細に説明することを目指した。 分析の結果、成人子の介護役割の予期やその主観的な遂行可能性は、本人の就労状況や家族の状況よりも/ではなく、きょうだいの就労・家族状況に左右されていることが確認された。特に、正規雇用されている(ゆえに経済基盤が比較的安定している)単身の女きょうだいがいることは、男女ともに介護役割の予期や主観的な遂行可能性を一貫して下げており、それは成人子自身が正規雇用・単身の女性であっても変わらなかった。したがって、就労する成人子がどの程度将来の介護役割を意識し、早めに準備を始め(られ)るかどうかを説明する上で、本人の属性・状況だけを見るのは不十分であること、むしろきょうだいという周囲の状況だけで説明されてしまうことを考慮した上で、親の介護への準備態勢をいかに整えうるかを議論する必要があることが示唆された。 なお、本研究は2020年の全米家族関係学会(National Council on Family Relations)の大会において、Issues in Aging Focus Group Award - Professionalの授賞対象となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに得られたデータを用いて計画していた分析を一通り実施し、学会報告が可能になるレベルまでは結果の整理と考察を終えることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題については、当初計画していた分析は既に行えているが、結果を報告した際、分析の方向性について幾つか重要な提案をいただいており、それらを加味した追加の分析を行うことが望ましい。具体的には、成人子の就労状況に関して、単に正規雇用か非正規雇用かを区別するだけでなく、職場におけるサポートの得やすさや制度などを加味した就労状況の把捉すること、また、介護の準備態勢を阻害する要因だけでなく、それを促進する要因についても検討することが学術的にも実践的にも必要であり、次年度にはそれらの分析を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は2つあり、1つは分析結果の報告にかかる経費(旅費等)が当初予測よりも少なく済んだためであり、もう1つは次年度における追加分析とその報告に備え、計画的に残したためである。次年度使用額は、計画通り、この追加分析とその報告のための経費(旅費等)に充てる。
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