研究課題/領域番号 |
17K13871
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
御旅屋 達 山口学芸大学, 教育学部, 講師 (10646558)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 若者支援 / 成人発達障害 / 当事者活動 / 居場所 / スティグマ |
研究実績の概要 |
本研究は,本来「障害」を支援対象としない若者就労支援施設における,障害のグレーゾーンにある当事者の支援が成立する諸条件について明らかにし,その支援過程において「障害」言説がどのように理解され,流通しているかについて検討をおこなうものである。また,この作業を通じ,成人発達障害者支援政策の制度設計の課題を抽出し,政策提言を行うこと,並びに若者支援現場における障害者支援に関する実践知を言語化し,実践にフィードバックしていくことも目指している。 2年目となる平成30年度は,代表者の異動にともなう新規のフィールド(若者支援)の開拓・調査開始,成人発達障害当事者への聞き取りを通じて,当事者活動を通して得られる役割についての検討などを行った。こうしたフィールドにおける観察,聞き取り調査によって得られたデータから,当事者のアイデンティティと社会的困難の関係について理論化する作業を行ってきた。
上記の作業の成果の中間報告として,日本の若者支援における医療のあり方を国際的な議論に位置づけることを目的とし,7月にカナダ・トロントで行われたXIX ISA World Congress of Sociologyにおいて,Medicalization and Youth Supportと題した報告を行った。本報告では日本の若者支援の現状,とりわけこの10年ほどの間に医療的概念との接近が急速に進んだことなどについて整理し,日本語における「発達障害」という用語の特異性,若者の就労においてその「障害」が重要な意味を持つに至った過程などについて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動に伴い,それまでフィールドワークを行っていた研究協力者へのアクセスが困難となったことが計画の遅れに影響している。代替となるフィールドの開拓や,旅費を計上してのデータ収集は一定程度行うことができたが,当初の計画ほど十分なデータを得られたとは言えない。よって「やや遅れている」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究プロジェクトの最終年度であるが,データ収集において不足があるため,一定の時間をデータ収集にまつわる作業に費やす予定である。特に成人発達障害者の当事者活動に焦点を当て,障害とは異なる課題を主要な課題としている若者支援における「障害」のあり方の比較対象となるデータの獲得を目指す。 得られたデータをもとに本研究全体の成果報告となる学術論文の執筆・出版,口頭による研究報告を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の異動に伴い,当初予定していた調査対象団体での調査が困難となったため,若干の次年度使用額が生じた。そのため引き続き翌年度も一定額を調査にまつわる金額(旅費・データ入力)に使用する予定である。
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