本研究は、本来「障害」を支援対象としない若者就労支援施設における、障害のグレーゾーンにある当事者の支援が成立する諸条件について明らかにし、その支援過程において「障害」言説がどのように理解され、流通しているかについて検討をおこなうものである。 本研究の主要な作業課題は若者就労支援施設における「障害」言説の理解と運用について利用者・支援者双方のインタビュー調査によって明らかにすることであったが、前年度までの研究から、若者支援の利用者同士の関係性が障害概念の理解に影響を与えていることがわかってきた。そうした知見をもとに、最終年度である2019年度においては、発達障害の当事者同士の関係性における障害理解の解明という問いへと展開することとした。具体的には成人の発達障害当事者を対象とした居場所型施設において、発達障害の当事者であることはいかなることとして理解されているのかについてインタビュー調査を行い、すでに得られている若者支援現場におけるデータとの突合を行なった。その成果をまとめ、論文を執筆、学会誌への投稿を行なったが、これについては年度内の刊行には至らなかった。同時に、本研究プロジェクトで得られた知見の一部は、2020年3月刊行の若者支援に関する学問知と実践知の融合を目的とした書籍(阿比留久美・岡部茜・御旅屋達・原未来・南出吉祥編『「若者/支援」を読み解くブックガイド』かもがわ出版.)に活かされている。
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