研究課題/領域番号 |
17K13875
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小澤 永治 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (60631273)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / 知的障害 / 境界知能 / 移行支援 / 心理アセスメント |
研究実績の概要 |
児童養護施設では,様々な障害をもった児童の入所率が増加していることが指摘されているが,これまでの研究では,障害種別の中でも特に知的障害や境界域の知的能力をもつ児童の割合が増加していることを示してきた。本研究では,課題となっている知的障害あるいは境界域の知的能力をもつ児童に対する支援モデルを提示するため,経時的な実態把握や支援事例の抽出を行っている。昨年度は経時的分析の基点となる児童の情報について,知的発達や適応状況に関するベースラインのデータ収集を行った。本年度は,協力施設における過去の事例について情報収集し,心理職の支援過程について聴取を行った。心理アセスメントの活用方法やプレイセラピー,臨床動作法等の支援技法の適用の在り方について整理を行っている。また,特別支援学級等の対象児童に対する教育的枠組みについても着目し,学校と連携した支援の在り方や,連携上の課題についての実態把握を行った。これらのデータ収集および参与観察は現在も継続中であり,次年度測定する数量的な変化と併せて考察する準備を整える事が出来ている。また,児童養護施設入所児童は,高校への適応の問題が生じやすく,家庭養育群と比較して中退率が高いことが示されている。そのため,高校の就学継続状況を一つの基準として,障害の有無や被虐待経験の有無,入所期間の長さ等の要因との関連を分析した。これらの結果については,来年度開催される16th European Congress of Psychologyにて発表を行うこととなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力施設において,対象事例の抽出および心理職からの事例聴取等が予定通り進んでいる。 高校適応を基準とした結果の一部については,来年度の国際学会において発表することとなり,アブストラクトも採択されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究計画の最終年度であり,知能検査や適応行動検査についての再検査を行い,経時的な変化について分析する。また,対象児童の支援経過の分析および典型事例・困難事例の分析を行い,量的・質的側面の両面から検討を行うことで,児童養護施設入所児童への支援の在り方について考察を行う。研究成果については,国際学会での発表および論文投稿を行い発信して行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度「若手研究(B)における独立基盤形成支援(試行)」の交付を受けたことに加え,消耗品費・旅費等が当初予定より低い金額で執行することができたため差額が生じた。次年度予定している調査旅費・国際学会での発表経費等として使用する計画である。
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