本研究課題の目的は、医療施設、介護施設・事業所の位置や人口の分布を表す地理空間データを用いて、地理的アクセスと介護サービスの地域差との関係を実証的に明らかにすることである。特に、地域包括ケアシステムの導入によって、地理的アクセスが介護サービスの地域差に与える影響が強まったのか、弱まったのか、あるいは変化がなかったのかという点に注目し、保険者ごとの地域包括ケアシステムの導入状況が介護サービスの地域差にどのような影響を与えているのかを明らかにする。これまでに行った介護サービス及び地域データを用いたクロスセクションデータ分析及びパネルデータ分析にもとづいて、地理的アクセスと介護サービスの地域差の間に特徴的な関係が示された市町村について、地域包括ケアシステムの導入状況を踏まえて分析結果の考察を行った。 これまでの分析結果から、既存研究で指摘されていた人口の年齢構成、所得や家族構成、医療・介護サービスの提供体制に加えて、サービスの地理的アクセスの違いによって介護サービスの地域差が生じることが明らかにされた。加えて、市町村に着目して考察を行った結果、介護事業所へのアクセシビリティが高い地域ほど介護サービスの利用が多くなるという関係が、介護サービスの利用と提供が同一保険者内で行われていると考えられる場合と、隣接する保険者間で行われると考えられる場合とで異なる可能性が示唆された。この考察を深めるため、北海道釧路市および同釧路町を事例に地域包括ケアシステムの導入状況と介護サービスの利用状況の関連を検討した。
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