研究実績の概要 |
平成30年度は、①医療・福祉人材の国際移動を支える組織としての労働組合の役割を明示、②国民国家を越えた福祉制度形成の可能性を検討、の二点の研究項目に取り組むこととしていた。上記①にあるように、労働組合に関する研究を進めながら、前年度の1)と2)の研究に基づき、最終的には②の国民国家を越えた福祉制度形成の可能性を検討、という項目に取り組むことを予定していた。 ①の研究を進めるにあたり、イギリスやシンガポールでのヒアリング調査も視野に入れていたが、実際には現地での調査の時間を確保することができず実施に至らなかった。研究実施計画に示した先行研究であるPenninx, Rinus and Judith Roosblad(2000) Trade Unions, Immigration and Immigrants in Europe 1960-1993に基づく文献研究が中心となった。本来は、文献調査を前提に、ヒアリングによって実態を考察することを予定していたが、その作業を行うことができなかった。②については平成29年度からの研究の継続も踏まえ、イギリス、シンガポールを対象に、主に英連邦内部での医療専門職の国際移動を事例として、国民国家の枠組みを超えた福祉システムの展開について、検討を行った。イギリスのEU離脱に伴う医療福祉サービス供給体制への影響についても論文にまとめ、英連邦とEUを拠点とした従来の体制からの転換の可能性を指摘した。また、当初予定していたイギリスとシンガポールだけでなく、日本についても医療現場で進むグローバル化の進展を取り上げ、研究を進めた。
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