研究実績の概要 |
本研究は,特に重度障害者の住まいの場に着目し医療的ニーズを有した重度障害者の地域移行を成立させる要件を検討することを目指し,グループホームにおける医療的ケア実施上の問題点と課題を明らかにすることを目的とする。先行研究の検討,ケア実践者へのインタビュー調査及び質問紙調査を実施することで,生活支援の実態調査を通して生活の成立要件を探り,今後の地域社会で生活が継続できる可能性を具体的に提案していく。1年目となる平成29年度は,研究計画通りケア実践者へのインタビュー調査を行った。グループホームにおける医療的ケア実施上の問題点と課題に関する主な成果は,次の4点である。 1.地域移行したいと希望する重度障害者がいても,法制度上に定められている事業所の人員配置や施設設備費の問題などが想定され,受け入れ先が無い。もしくは,支援に結びつくまでに困難を要する。 2.地域移行の受け皿となるグループホームは,主に夜間での生活支援が求められるが,短時間雇用を導入すると,有資格者で正規雇用とするには施設が負う経営上のリスクが大きい。 3.介護福祉職員が医療的ケアを実施できるよう法整備されても,実際の養成には時間がかかることや養成費用の持ち出し発生など事業所が負担すべき時間とお金の問題がある。 4.訪問看護ステーションと協働しながら障害者の生活を支えたくとも,障害者の医療的ケアを実施することは敬遠されがちである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年7月より妊娠し,当初予定した研究活動の継続が一時困難となった。これにより、面接調査時期を当初予定より年度の後半にスライドさせ,平成29年度は文献調査および面接調査の実施を中心に研究を進めて,逐語録作成までを取り組んだ。その結果,1年目に計画していたインタビュー調査及び反訳は予定通り実施することができたが,インタビューの内容分析を行うことまではできなかった。そのため,別途申請を行う通り,平成30年2月より産休および育休を取得したことに伴い,逐語録作成以降のデータ分類作業等について本研究は中断している。そのため,計画よりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度2月から平成30年度3月までの本務校における産休・育休取得に伴い,平成31年度4月より研究活動を再開し,研究期間延長の申請をする予定である。2年目となる平成31年度には,当初平成29年度及び平成30年度に実施を予定していた面接調査のデータ分析と,面接調査結果に基づく質問紙調査の実施に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
産休および育休を取得したことによりデータ分析の実施を見合わせた。そのため論文投稿にかかる費用や英文校閲にかかる費用等に未使用額が生じた。また,インタビュー調査に出向いた場所が当初予定から近隣に集中したことにより未使用額が生じている。 研究中断期間が1年以上あるため,研究期間を延長する予定である。それに伴い,助成金の使用計画もスライドさせる予定である。
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