研究課題/領域番号 |
17K13879
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
松田 実樹 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (60635548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域 / 障害者 / グループホーム / 医療的ケア |
研究実績の概要 |
本研究は、特に医療的ニーズを有した重度障害者の地域移行を成立させる要件を検討することを目指し、グループホームにおける医療的ケア実施上の問題点と課題を明らかにすることを目的とする。研究2年目となる2019年度では、面接調査のデータ分析を主に行い、内容分析によってグループホームにおける医療的ケア実施上の問題を探った。研究対象地域は、北海道、岐阜、三重、大阪、鳥取、愛媛、山口にある10事業所で、2017年段階で県が指定しているグループホームの数が多い県と少ない県それぞれ5か所ずつである。現状として既に喀痰吸引や胃ろうによる食事介助といった医療的ケアが必要な重度障害者の受け入れ実績があるグループホームは3か所で、実際に受け入れ実績のないグループホームも今後、実施体制の見直しを図っていかなければならない状況にあった。それぞれのグループホームにおける医療的ケア実施上の課題としては、以下の4点に整理できた。 ① 人員配置や設備整備費の負担、周辺サービスの供給体制の不備などハード面の課題 ② 有資格者を短期間正規雇用するために負う経営上のリスク ③ 医療的ケアを実施する基盤整備のための養成上の課題 ④ 対象者の特性から訪問看護とグループホームとの協働が困難 また、これらの面接調査結果を基に質問紙を作成し、47都道府県のグループホームを層化抽出法によって選び、各都道府県3か所のグループホームへ質問紙による郵送調査を実施した。回収率は33%で、介護サービス包括型が多く、世話人の不足感を感じていた。また、半数近くが何らかの医療ニーズを有する利用者が入居しつつも、現状提供できる医療的ケアの内容は内服管理が約90%を占め、それ以外の医療的ケアの提供はほとんどできる状態にないこと、今後障害者が現状以上の医療的ケアを必要とした時に継続して支援できる環境となっていないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
育児休暇取得及び、補助事業期間延長により、当初予定していた研究遂行から一年遅れて計画が進んでいる。その後、面接調査の分析と予備調査を行ったが、量的調査において本調査実施までには至っていない。 ただし、予備調査のデータ入力および分析等は既に終えており、本調査の送付場所選定にも取り掛かっていることから、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる2020年度では、質問紙調査後の追加調査としてインタビュー調査を実施し、事例研究を行う予定であった。しかしながら、2019年度末からの新型コロナウイルス感染症による影響で、既に面接調査を行っても良いと回答を得て調整を行っていたグループホームから面接辞退の要請が続き、面接調査の計画を立てることができない状況にある。 本研究の研究対象は、呼吸器疾患等を含む医療的ケアが必要な障害者の介護福祉職員となっていることもあり、今後の状況によっては当初予定していた面接調査による事例検討ではなく、対面の形をとらない郵送による事例調査か、研究目的を達成できる形での質問紙調査(量的調査)に変更することも視野に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査のために計上していた旅費については、勤務校近隣に集中したことによって交通費や宿泊費に未使用額が発生している。また、研究2年目に予定していた郵送調査が、予備調査実施にとどまったため、郵送費やデータ入力のための人件費に未使用額が生じている。 ただし、研究最終年度に本調査実施として全国調査を予定していることや、研究環境の変化による分析ソフトの入れ替えが生じる可能性があり、直接経費の内訳を変更して研究目的達成の為、効果的に活用していく予定である。
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