研究課題/領域番号 |
17K13888
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
内藤 千尋 松本大学, 教育学部, 講師 (30734074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発達困難 / 非行 / 少年院 / 発達支援 / 矯正教育 / 地域移行支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、発達障害等の発達上の課題・困難を有する非行少年本人の抱える困難・ニーズを明らかにするとともに、地域生活定着支援センター・保護観察所における支援の実態調査を通して、福祉・矯正・教育において求められている発達支援・地域移行支援の課題や機関連携の在り方を検討することを目的としている。 平成29年度は研究計画に沿い、先行研究レビューによる研究の動向・課題の把握と以下の調査等に着手している。①発達障害等の発達困難を有する少年の矯正教育・更生保護において先進的な取り組みを行っている北欧スカンジナヴィア諸国(スウェーデン・ノルウェー・フィンランド)の非行・犯罪に対する地域社会支援に関する実践についての調査の実施を実施。訪問では、国立少年教育施設(スウェーデン)や女性刑務所(ノルウェー)、子どもの権利擁護センター(ノルウェー)、薬物依存者を親にもつ子どもの当事者ネットワーク(ノルウェー)、保健福祉研究所(フィンランド)、若者支援センター(フィンランド)等を訪問し、各国の若者支援の現状・課題の把握を通して、日本における若者や発達上の課題・困難を有する非行少年の支援の課題を検討した。 ②発達障害等の発達上の課題・困難を有する非行少年を対象に、彼らの抱える困難・ニーズを明らかにするための面接法調査を実施した。調査は「支援教育課程Ⅲ(N3)」(軽度の知的障害・発達障害やボーダーラインにある少年を対象とした処遇課程)」の矯正教育課程に指定された発達障害等の発達上の課題・困難を有する少年から回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画に従い、先行研究の動向・課題の把握をもとに、①発達障害等の発達困難を有する少年の矯正教育・更生保護において先進的な取り組みを行っている北欧スカンジナヴィア諸国(スウェーデン・ノルウェー・フィンランド)の非行・犯罪に対する地域社会支援に関する実践についての調査、②発達障害等の発達上の課題・困難を有する少年院入院経験者への面接法調査を実施し、福祉・矯正・教育において求められている発達支援・地域移行支援の課題や機関連携の在り方の検討を概ね順調に遂行している。 ①北欧調査では、スウェーデン・ノルウェー・フィンランドにおける国立少年教育施設(スウェーデン)や女性刑務所(ノルウェー)、子どもの権利擁護センター(ノルウェー)、薬物依存者を親にもつ子どもの当事者ネットワーク(ノルウェー)、保健福祉研究所(フィンランド)、若者支援センター(フィンランド)等の実践を訪問調査した。訪問を通して、多様な「貧困・格差」が、子どもの「うつ・自傷・拒食・薬物依存・愛着障害・発達障害」等の不適応・発達困難にも大きな影響を及ぼしている現状があることを整理することができた。 ②「支援教育課程Ⅲ(N3)」に指定された発達障害等の発達上の課題・困難を有する少年への半構造化面接法調査および(2)担任等の法務教官との協議を実施した。本調査は法務省矯正局少年矯正課の協力を得ている。少年への質問項目は「入院前の様子(家庭・学校生活・対人関係等)」「少年院での生活(生活面・対人面・学習面)」「将来の夢,進路」を設定し、少年への調査結果をもとにした法務教官との協議では「少年の成長,変化の様子」「少年と関わる際の工夫」「今後の対応の課題」を設定した。2017年4月~2018年3月までに延べ44名の少年との面接及び各少年に関する職員協議を行った。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に引き続き、「支援教育課程Ⅲ(N3)」(軽度の知的障害・発達障害やボーダーラインにある少年を対象とした処遇課程)」の矯正教育課程に指定された発達障害等の発達上の課題・困難を有する少年への半構造化面接法調査を継続し、本人の有する困難・ニーズを明らかにしていく。また、30年度は調査対象として全国82ヶ所の保護観察所等職員(保護観察官・保護司・更生保護施設職員・自立準備ホーム職員)や地域生活定着支援センター職員等も検討していく。 なお、各調査結果については調査結果メモからコード化を行い、カテゴリ化をして統計的処理をしながら検討を進める。 全国保護観察所・更生保護施設職員、発達障害等の発達困難を有する非行少年へのニーズ調査等調査結果とこれまでに応募者らが取り組んできた児童自立支援施設(45施設)、児童自立支援施設併設の分校・分教室(33校)、自立援助ホーム(40施設)、少年院(48施設)、少年鑑別所(26施設)の職員の調査結果との比較検討および少年非行・矯正教育において求められている発達支援、地域移行支援の課題を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を検討していた図書・文献購入内容を変更したこと、訪問先が比較的近県であったため、設備備品費及び旅費交通費に差額が生じた。次年度は動向把握・検討のための文献購入と分析のための設備備品の購入を検討している。
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