今年度は、本研究の研究実施計画に沿いつつ、①発達上の課題・困難を有する非行少年本人への面接法調査については前年度より調査対象を継続した面接法調査、②スウェーデンおよびフィンランドのユースセンター・若年労働者支援団体・特別学校・精神科ユニット・障害児施設・障害当事者支援組織等への訪問面接法調査を通して、福祉・矯正・教育において求められている発達支援や地域移行支援の課題を検討した。 発達上の課題・困難を有する少年本人の面接法調査結果からは、教官等の丁寧な関わりや信頼の形成を通して「生活と発達の土台」が構築され、こうした少年院の機能が入院前の「貧困・劣悪な家庭環境、被虐待・ネグレクト・愛着障害、学習空白・学習困難・自尊感情低下」等に起因する発達困難の大きな改善に繋がっていることが明らかとなった。 また、訪問した北欧諸国における少年教育施設の実態や地域移行支援・非行防止支援の現状および、これまでに報告者らが実施してきた児童福祉施設・児童自立支援施設併設の分校・分教室・少年鑑別所職員等への調査結果との比較検討を通して、非行予防支援として教育・福祉関係機関連携による早期の支援介入が課題である。また、少年の「育て直し・更生・社会復帰」に向けた教育支援を行う少年院において、2016年6月に全庁配布された『発達上の課題を有する在院者に対する処遇プログラム実施ガイドライン』が示しているように、発達支援の観点から処遇について再検討されていることは大きな意味をもつことが確認された。その上でさらに、現代に適合する基礎的環境整備、合理的配慮に基づく発達支援の提供や少年院独特のルールの改善、学校教育の導入等が、当面する緊要な改善課題である。
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