本研究の目的は、外国籍住民の集住地域における「多文化共生の地域づくり」、「多文化ソーシャルワーク」の実践に求められている取り組みを明らかにすることである。 必要とされる実践の手がかりを得るために、地域の支え合いの仕組みである民生委員活動に着眼し、外国籍住民の集住地域の大都市A区にてインタビュー調査とアンケート調査を実施した。過年度に、民生委員活動の参与活動を行った後にインタビュー調査を実施し、分析内容からアンケート調査票を設計の上、調査を実施した。 今年度は、昨年度から継続してアンケート調査の分析、論文作成を行った。アンケート調査では、A区民生委員241名を対象に、民生委員活動の支障要因の構造を探索的に明らかにした上で、回答類型と外国籍住民への関わり度の関連の分析から民生委員活動の課題を検討した。 民生委員活動の支障要因には、因子分析の結果、5つの活動支障要因「民生委員活動のサポート体制」「具体的な活動方法」「外国籍住民への働きかけ」「地域活動における外国籍住民との関わり」「地縁型組織との連携」が抽出された。活動支障要因には外国籍住民に特化した因子が含まれていた。活動支障要因の回答パターンの特徴を把握するための分類は2グループに分かれた。グループ間の比較では、活動支障要因が「高群」であるグループで、民生委員活動の「外国籍住民への関わり度」の「3割以上」が多かった。 これらの結果から、今後の実践に求められている取り組みとして4点「1、専門職と地域の中核的担い手である民生委員の連携の有効性を明らかにすること2、専門職が外国籍住民の置かれている立場の理解を深め構造的・個人的障壁の問題に取り組むこと3、多文化共生の地域の拠点づくりなどの社会資源の開発4、実践理論の枠組みの構築」を提示した。
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