研究課題/領域番号 |
17K13905
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石井 辰典 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (40708989)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シャーデンフロイデ / 公正 / 規範逸脱 |
研究実績の概要 |
本研究は、シャーデンフロイデと呼ばれる感情経験が規範逸脱者な人物への罰達成に伴う快感情に由来するという仮説を実証的に示すことを目的としていた。そして、不公正な人物の罰はヒトの協力的な社会の維持に必要であることため、シャーデンフロイデに利他的罰(協力関係の維持するための罰)を促進する可能性を示すことを最終的な目標としていた。
昨年度は、仮説1:規範を遵守する公正な人物の不幸よりも、それを逸脱する不公正な人物の不幸に対して(それが罰であると認識し、動機が解消されることで)強くシャーデンフロイデを感じるだろう、作業仮説2:規範逸脱を罰する動機づけの高い人ほど、規範逸脱者な人物の不幸に対し強くシャーデンフロイデを感じるだろう、の2つの仮説を検討した。一連の質問紙調査の結果、作業仮説1、2は支持された。しかしながら、規範逸脱を罰する動機づけの中でも「個人的攻撃傾向の高さ(相手が規範を破る振る舞いをしたことを理由に個人的な攻撃をしたい)」が特に逸脱者へのシャーデンフロイデを予測し、これはシャーデンフロイデに利他罰促進機能があるという可能性を支持するものではなかった。
そこで本年度は、再度調査を実施するとともに、昨年度のデータの再分析を行った。目的は、上記の結果が再現されるのかを確かめることと、シャーデンフロイデを喚起する主要な要因の1つである不幸の相応正と規範逸脱への罰動機の高さがどのように関連するのかを検討することであった。その結果、1)昨年度の結果同様に個人的攻撃傾向の高さと規範逸脱者へのシャーデンフロイデ傾向の関連が認められた。この傾向は、参加者が不公正な人物から直接被害を受ける場面(一人称視点)でも他者が不公正な人物から被害を受ける場面(三人称視点)でも同様であった。2)個人的攻撃傾向の高さは、不幸の相応正とは独立に、規範逸脱者へのシャーデンフロイデを促進していたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
繰り返しの調査により、本来想定していた利他的罰ではなく、個人的攻撃傾向がシャーデンフロイデと関連を示したことにより、本研究計画に修正が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、研究間の連続性・比較可能性を担保するために、公正さを志向する傾向の測定指標として同一の指標を用いてきた。しかしそうした指標は複数あり、それぞれで概念的にわずかに異なる傾向を測定する。そうした異なる指標を用いることで、どのような公正に関わる動機・傾向がシャーデンフロイデと関連するのかいついて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動や理論的に想定された通りの結果が得られなかったことから、当初の計画通りに研究は進まなかった。そこで、研究計画の一部を修正し、公正に関わるどのような動機づけがシャーデンフロイデと関連するのかを、体系的に検討する。具体的には、互恵性規範・平等分配規範など、協力・公正の進化に関する研究文脈で問題とされる規範を扱い、それぞれの規範違反をどれだけ許せないか(罰したいと思うか)を測定する。そしてそうした規範の違反をする人物が、相応性の高い/低い不幸にあった場合、どれだけそれに快感情を感じるかを測定する。
この研究計画では、効率的に回答者を集めるためにWeb調査と質問紙調査を併用することとする。そのための調査費用(Web調査費用、質問紙印刷費用)に本年度の直接経費をあてる予定である。
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