研究実績の概要 |
本研究では、シャーデンフロイデが生起する原理には複数あり得るが、その1つとして、この感情が規範を違反する不公正な人物への罰達成に伴う快感情に由来することを実証的に示すことを目的とした。そのために以下の2つの仮説を検討した。 【仮説1】人々は不公正な人物を罰するよう動機づけられるため、公正な人物の不幸よりも、不公正な人物の不幸に対して(それが罰であると認識し、動機が解消されることで)強くシャーデンフロイデを感じるだろう。 【仮説2】不公正な人物に罰を与えそれを正そうとする傾向には個人差があり、規範の逸脱者に対して罰を与える傾向にある人ほど不公正な人物を罰する動機づけは強く、その不幸に対し強くシャーデンフロイデを感じるだろう。
仮説1、2を検討するために、場面想定法を用いた質問紙実験を行った。また不公正な人物への罰をの動機づけを測定するために、サンクション行動傾向尺度(森本他, 2008)や応報信念尺度(Gerber & Jackson, 2013)を用いた。これらはいずれも、公正・正義の回復を目的として罰を与える傾向と、違反者を苦しめるために罰を与える傾向の2種類を測定することができる。その結果、まず規範違反をする不公正な人物の不幸は、違反をしない人物の不幸よりも、シャーデンフロイデは高く報告され仮説1は支持された。次に、罰への動機づけとシャーデンフロイデの関連を検討したところ、いずれの尺度を用いた場合でも、違反者を苦しめるために罰を与える動機の強さが、違反者の不幸に対するシャーデンフロイデと正の関連を示した。
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