本研究の目的は、文化に特有とされる心の発達的変化についての定量的データを蓄積し、その伝播過程に関する理論モデルを構築することにあった。この大枠の目的をかなえるために実施した個別研究の結果から、文化的独立性と文化的協調性を議論する際には選好と予想とを区別する必要があること、また年齢を重ねるにつれて日本人の文化的独立性が高まる一方で、文化的協調性は低くなること等が明らかにされた。これらの結果から、日本人(とくに若い世代)には、排除を回避するという意味での協調的な生き方を「せざるを得ない」状況が存在しており、こうした状況を理解することこそが文化心理学の研究知見の蓄積に有用となる可能性を指摘した。
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