研究課題/領域番号 |
17K13912
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
武藤 世良 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (30785895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尊敬 / 発達 / 子ども / 教師 |
研究実績の概要 |
人が学び育ち、他者と良好な関係性を築く上で、他者を尊敬することには重要な社会的機能がある。尊敬する心の育成は日本の学校教育の目標の1つともされてきた。しかし、尊敬には少なくとも義務尊敬(尊重)・感情的態度尊敬・感情状態尊敬という3つのモードがあり、それぞれがいかに発達するのかは定かでない。そこで、本研究では特に学校教師の役割に着目し、子どもの尊敬の発達過程と促進要因を明らかにする。本年度は課題1として、小学生・中学生・高校生を対象に尊敬の標準的発達の様相を明らかにすることを目的とした。当初予定した調査研究は計画準備段階に留まったものの、研究代表者が以前関わった国立教育政策研究所のプロジェクト研究「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究」(平成27~28年度)の一環として行われた児童期・青年期対象の約1年弱間隔での2時点の大規模質問紙調査の2次分析により、課題1に関わる知見が得られた。具体的には、子どもが尊敬の感情的態度を向ける人物について検討した結果、(1)対象となった小学生中高学年・中学生・高校生を通じて、約8割が尊敬する友人が「いる」と回答した。この知見は尊敬が、元来タテ関係が基盤にある感情であることを踏まえると興味深く、日本の子どもがタテ関係だけでなく、ヨコ関係にある多くの友人を尊敬し、友人から多くを学んでいる可能性があることが示唆された。(2)尊敬する家族や学校教師が「いる」との回答は、中学生では調査2時点目になると低下する傾向がある一方で、高校生では2時点目になると増加する傾向が示され、近年の国際比較調査結果とは異なり、日本の子どもにおいて、親や教師への尊敬が低下しているとは一概に言えないことが示唆された。(3)尊敬する先輩が「いる」との回答は、中学生から多くなることが示され、先輩への感情的態度尊敬がこの時期に特に発達することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本科研費以外のプロジェクトでの大規模質問紙調査データの2次分析により、小中高生の尊敬の感情的態度の発達に関する知見が数多く得られたものの、本科研費で当初予定していた質問紙調査については実現できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた2次分析の結果を踏まえ、研究1(尊敬の標準的発達を捉える尺度開発・横断調査)の調査計画を練り直し、平成30年度に実施する。また、本年度利用した国立教育政策研究所の質問紙調査データについては、大規模サンプルであり、小中高生の尊敬の感情的態度だけでなく感情特性、また他の多くの非認知的能力(社会情緒的コンピテンス)についても尋ねているため、今後も本研究の示唆を得るために積極的に利用する。また、平成30年度に当初予定していた研究2(学校教師への尊敬の規定因と教育的機能)についても研究1と同時並行で進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)国際感情学会(International Society for Research on Emotion)に参加する予定であったが、公務の関係で都合がつかず、参加を見送ったため、また(2)調査研究を実施することができず、データ入力補助として計上していた人件費が使用されなかったため、という2点の理由により、次年度使用額が生じた。次年度以降の旅費および人件費に充てることとする。
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