研究課題
本研究の目的は、他者を尊敬する心の育成に関して、尊敬には義務尊敬(尊重)・感情的態度尊敬・感情状態尊敬という3つのモードがあると捉え、それぞれの発達過程と促進要因を解明することである。特に学校教師の役割に着目し、(1)他者への尊敬の標準的発達、(2)学校教師への尊敬の規定因と教育的機能、(3)他者への尊敬を促進する学級・学校環境、という3つの課題を検討してきた。これまでの主な知見として、課題(1)では小学生は中高生よりも、また女子は男子よりも尊敬感情特性(感情状態尊敬の経験しやすさ)が高い可能性が示された(2018年度実施状況報告書)。課題(2)では、保護者の学校教師に関する信念や言葉がけが潜在的に教師への尊敬の規定因の1つである可能性が示された(2019年度実施状況報告書)。最終年度の本年度は、課題(3)に関する知見が得られた。具体的には、研究代表者が文部科学省研究開発学校運営指導委員を務めている、お茶の水女子大学附属小学校における新領域「てつがく創造活動」(以下、てつ創)の効果検証の一環である児童対象の1年間隔の縦断的な質問紙調査データの二次分析を実施した。パス解析の結果、特定年度の6年生では5年生時点の変数を統制しても、当該年度のてつ創への行動的エンゲージメント(没頭)が高いほど尊敬感情特性と敬意表示(周囲への義務尊敬の表示)が高いことが明らかとなった。てつ創では、身近な事象や概念の意味や価値を主体的に探究する「てつがく」と、自ら計画し取り組むプロジェクト型の「創造活動」を融合し、子ども自らが学びを構想し、他者と関わりながら主体的に探究することでメタ認知・社会情緒的スキルを育むことが目標とされている。この結果は、教師がてつ創のような主体的で協働的な探究を支援することが子どもの義務尊敬や感情状態尊敬を促進する可能性を示しており、今後の研究展開を考える上でも意義深い。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Affective Science
巻: 5 ページ: 49
10.1007/s42761-023-00233-x
Discover Psychology
巻: 3 ページ: -
10.1007/s44202-023-00075-5
http://researchers2.ao.ocha.ac.jp/html/200000252_ja.html
https://researchmap.jp/seramuto/