研究実績の概要 |
本研究は自閉症スペクトラム障害者における状態像とユーモア体験との関連について明らかにすることを目的とした。令和元年度は平成30年度に実施した典型発達者を対象とした調査研究について、学会でのポスター発表と誌上発表を行った。 典型発達者を対象に、冗談文に対する反応を測定するとともに、自閉症スペクトラム障害における状態像の1つである刺激に対する感覚の過敏性を質問紙によって測定した。そしてこの調査で得られたユーモア体験と感覚の過敏性との関連について検討したところ、ユーモア体験のしやすさにはソーシャルスキルの高さと感覚刺激に対する興奮のしやすさが影響を与えているということが示された。この結果についてAsia Pacific Autism Conference 2019でポスター発表を行ったのち、Cogent Psychology誌において発表した(Nagase, K. The traits of autism spectrum disorder in the general population influence humor appreciation: Using the Autism-spectrum Quotient and HSPS-J19. Cogent Psychology, 6, 1696000 2019)。 加えて、令和元年度はユーモアが持つ情動調整の効果について、ユーモアがネガティブな情動をどのように調整するのかというプロセスに焦点を当てたレビュー論文を執筆した。先行研究をレビューした結果、ユーモアによる情動調整のプロセスには、ユーモアが産出されるプロセスとユーモアを他者と共有するプロセスの2つがあることが見出された。
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