研究課題/領域番号 |
17K13920
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
池田 幸恭 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (70523041)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育系心理学 / 親子関係 / 親の老い |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、親の老いの認知が青年期から成人期にわたる親子関係に与える影響について明らかにすることである。平成29年度は、以下の2つの研究を行った。 研究1では、20~39歳の合計800名(男性412名、女性388名)へ、2017年8月にweb調査を実施した。親の老いの認知として、「親の老いの否定的認知」と「親の老いの肯定的認知」の2因子が抽出された。親の老いに対する態度として、「老いた親への配慮」、「親の老いへの悲哀」、「親の老いに伴う不安」、「親の老いによる世代継承性」の4因子が抽出された。親の老いを肯定的に認知しているほど老いた親への配慮と親の老いによる世代継承性が高まり、否定的に認知しているほど親の老いに伴う不安が高まる傾向がみられた。特に女性は、親の老いを肯定的に認知することで親の老いに伴う負担が低減しており、その背景には親の扶養役割を女性が担うという伝統的役割意識の影響があると考えられた。 研究2では、20~30歳の800名(男女各400名)へ、2017年12月にweb調査を実施した。親の老いの認知について、親に対する感謝の心理状態を介した老親扶養意識との関連を検討した。親の老いを肯定的に認知しているほど、親に対する感謝の気持ちが高まり、情緒的支援志向の高まる傾向がみられた。親の老いを肯定的に認知しているほど負担をかけたことへのすまなさを、否定的に認知しているほど自分が苦労しているのは親のせいだと感じる気持ちを感じており、規範的扶養志向の高まる傾向がみられた。 以上より、青年期から成人期にわたって親の老いの認知のあり方によって親の老いに対する態度が異なること、親の老いを認知することが親に対する感謝ならびに親の扶養意識に関連することが示唆された。このことは、現代日本の長期化した親子関係を理解する上で重要な基礎資料となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は計画どおり、研究1で青年期から成人期にわたる親子関係に着目し、親の老いに対する態度について尋ねる項目を構成して親の老いの認知との関連を検討した。 さらに、研究2で親の老いの認知と親に対する感謝、老親扶養意識との関連を明らかにした。親の老いの認知に関連する要因として、親に対する感謝(これまでの関係)、老親扶養意識(これからの関係)に加えて、現在の親イメージを尋ねる計画であったが、青年期から成人期にわたる発達をとらえる指標として親からの精神的自立について調査することにした。親からの精神的自立と親の老いの認知との関係についても、継続して分析する。 親の老いに対する態度を尋ねる項目を丁寧に作成することを重視したため、平成30年2月に実施予定であった調査が未実施である。この調査は、研究3で親の老いの認知がおとなになることの自覚(大人感)に与える影響を交差遅延モデルによって検証するための初回調査である。
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今後の研究の推進方策 |
研究3で親の老いの認知と大人感の相互関係を検討するための質問紙は既に完成している。この研究は、所属研究機関に設置されている「和洋女子大学人を対象とする研究倫理委員会」の承認を得ている。平成30年5月に、20代・30代の1800名(年代別に男女300名ずつ)にweb調査を行う。 親の老いの認知に変化がみられる期間を確保するために、研究3の縦断調査を予定していた半年間隔から9ヶ月間隔へ変更することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
親の老いに対する態度を尋ねる項目を丁寧に作成することを重視したため、平成30年2月に実施予定であった研究3の初回調査を平成30年5月に実施することになった。そのため、初回調査にかかるweb調査費用について、次年度使用が生じた。
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