研究課題/領域番号 |
17K13923
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
杉本 英晴 駿河台大学, 心理学部, 講師 (20548242)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不快情動 / 接近的態度 / 子育て / キャリア |
研究実績の概要 |
本研究は,情動調整に影響を及ぼす不快情動に対する態度において,これまで十分な検討が行われてこなかった不快情動に対する接近的な態度である「不快情動への開放性」を新たに概念化し,その情動調整過程を解明することによって,不快情動に対するより適応的な情動調整について検討することを目的としている。 3年間の研究期間の初年度にあたる平成29年度は,不快情動に対する接近的な態度を検討すべく,子育て中の保護者を対象に,不快情動を抱く子育て場面や不快情動の解消方法について自由記述回答による調査を行った。KJ法による分析を行った結果,不快情動を抱く場面については,乳幼児の保護者にのみ,子どもの発達や子育てに関するわからなさを感じる場面や身体的・精神的負担を感じる場面,そしてこれらの不安感・負担感について相談相手の不在を感じる場面が,カテゴリーとして抽出された。また,児童の保護者にのみ子どもの悩みに対する対応場面が抽出され,子どもが言うことを聞かない場面や自分の時間が十分に取れない場面,「ワンオペ」育児の場面などは乳幼児と児童,どちらの保護者でも確認された。 また,これらの子育て場面で喚起された不快情動の解消方法については,先行研究で抽出されてきた情動調整に対する回避的な態度や情動焦点的な態度といった不快情動の低減を志向する態度,および,不快情動をそのまま受け入れようとする受容的な態度が多く抽出された。一方で,本研究で概念化を目標とする不快情動を活用しようという肯定的な態度も抽出され,「不快情動への開放性」に関する一側面が明らかにされた。 なお,本研究結果の一部は,平成29年度日本発達心理学会第29回大会のポスター発表による報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は,「不快情動への開放性」に関する尺度項目を設定し,尺度を作成することであった。尺度項目については,順調に収集していたが,収集されていた項目では,「不快情動への開放性」が十分に測定できない可能性を子育て研究の専門家から指摘をいただいた。今後,新たな概念として「不快情動への開放性」を提言していくうえで,より高い信頼性・妥当性を兼ね備えた尺度を作成すること,そのための尺度項目を設定することは非常に重要な手続きであると思われる。 そこで,あらためて「不快情動への開放性」について,より包括的に概念を設定し直し,尺度項目を収集し直す。平成30年度の前期までには,収集し終え,新たな尺度作成を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の前期には,「不快情動への開放性」に関する尺度を作成し,十分な信頼性・妥当性を有した尺度を作成する予定である。その尺度をもとに,平成30年度の後期には,子育て場面と同様に統制可能性を高く保つことが困難な場面であるキャリア意思決定場面に注目し,「不快情動への開放性」が及ぼす影響を検討する。具体的には,キャリア意思決定場面でも,不快情動が喚起されやすく不快情動による回避行動がとられやすい,大学生のキャリア意思決定場面に注目し,「不快情動への開放性」が不快情動回避行動を抑制し,キャリア意思決定行動を促進するかについて,検討を行う。 平成31年度には,子育て場面での「不快情動への開放性」の影響について検討する。とくに不快情動が喚起されやすい子どもの泣き場面に注目し,「不快情動への開放性」が子どもの不快情動に寄り添った接近的な子育て行動を促すかについて検討する。具体的には,保護者の「不快情動への開放性」が子どもが表出した不快情動を受容し,応答的な子育て行動を促すかについて検討する。 なお,これらの研究成果は,日本発達心理学会や日本キャリア教育学会にて,学会発表や学会誌への投稿により行っていく予定である。さらに,研究協力者には,研究成果公開パンフレットを最終年度に作成し配布するとともに,インターネットでも公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に作成を予定していた尺度の項目選定をより詳細に行う必要があり,そのため新たな調査を行うことが求められた。そのため,データ入力補助者への人件費の支出が少額となり,また購入予定であった分析用ソフトMplusについて購入を延期した。これらについては,平成30年度研究計画の予算と合わせて,平成30年度での支出を予定している。
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