研究実績の概要 |
本研究では,ペリネイタル・ロスによる悲嘆反応を測定する標準的な指標であるPerinatal Grief Scale (PGS : Potvin, Lasker, & Toedter, 1989)を日本語に翻案し,その因子構造,妥当性,信頼性を検証を通して日本語版尺度の開発を行った。 現在,日本ではペリネイタル・ロスによる悲嘆反応が性別によって異なるのかについて,量的研究によってほとんど検討されておらず,まだ明らかになっていないことが多い。海外の研究では,性別による悲嘆反応の違いについて一貫た結果がえられていない 。そこで,ペリネイタル・ロスによる悲嘆反応について性別による違いを検討した。 対象については,ペリネイタル・ロスを経験しており,調査への同意を得られた186名(男性73名(M=42.1, SD=±8.0),女性113名(M=38.1, SD=±8.7)を対象に調査を実施した。 確証的因子分析の結果から「ペリネイタル・ロスの経験による無力感」と「ペリネイタル・ロスによる感情体験」からなる2因子構造が見出された。信頼性の検証の結果,高い信頼性と概ね仮説通りの良好な妥当性が確認された。これらの結果は,本尺度が今後ペリネイタル・ロスの悲嘆反応評価を評価する尺度として十分な信頼性と妥当性を有していることが確認された。また,ペリネイタル・ロスという出来事の当事者性の認識について検討するために,「喪失に関するあなたの考えや認識」について質問し,男性と女性の結果の比較を行った。その結果,男性のほうが女性よりも当事者性が弱く,自分のことを「支援者」として認識している可能性があることが示された。 また,本研究ではコロナ禍で実施していたこともあり,遠隔心理支援の体制整備を目的に遠隔心理支援の国内外の文献を展望しガイドラインの作成を行った。これらのガイドラインについては論文として刊行している。
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