研究課題/領域番号 |
17K13934
|
研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
綾城 初穂 駒沢女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60755213)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ディスコース / 保護者支援 |
研究実績の概要 |
【研究目的】価値観が多様化する現代日本においては、社会文化的文脈(ディスコース)を加味した保護者支援アプローチが求められる。本研究では、このアプローチを開発することを目的した。平成30年度は、A)具体的な保護者支援を通しての調査、B)コミュニティレベル(保護者グループ)での調査を平成29年度に引き続き行うとともに、ディスコース・アプローチに詳しい海外研究者からの指導を受けながら、C)ディスコースの視点から保護者支援のモデル化を進めることを予定した。 【実施内容】本年度は、主に上記A)にあたる具体的な保護者支援について、複数事例の縦断的調査を行った。加えて、ディスコースを用いたアプローチに詳しいJohn Winslade教授(California State University San Bernardino)、Michael Williams氏(Edge-water college, New Zealandスクールカウンセラー)、国重浩一氏(Diversity Counseling New Zealandカウンセラー)からもディスコースを用いた理論的背景および分析方法について指導を受けた。 【研究成果】保護者支援の縦断調査の結果、約80時間分のデータが収集された。全事例で支援が継続されているため、来年度も引き続き調査を続ける必要があるが、現時点では支援の展開とともに子どもの自主性を尊重する「子ども中心主義」ディスコースがみられることが示唆されている。加えて今年度は、前年度の調査結果について論文が執筆・出版された。具体的には、インターネット調査の結果(日本において幸福感が特に家族とのつながりの中で捉えられている可能性)については研究機関内紀要論文として出版され、保護者に対する「欠損ディスコース」と「家父長制ディスコース」の影響については学会査読論文として受理された(現在印刷中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のうち、A)については、どれも支援継続中のものであり、研究に利用可能な形としてデータを取得するのにまだ時間を要する。また、B)については、平成29年度同様、当該年度においても研究協力が可能な保護者グループを見つけることができなかったため未着手である。C)については、平成29年度で指摘した支配的ディスコース(保護者に否定的に働き得るディスコース)に加えて、さらにオルタナティブ・ディスコース(支配的ディスコースの代わりになるディスコース)とその支援のプロセスについても示唆され始めているが、A)と同様の理由で本格的な分析に至っていない。 このように当該年度の計画は遅れているものの、A)については平成29年度と比べ大幅にデータが収集できており、C)で記したように分析も進んでおり、成果についてのアウトプットも行えている。このことから、本研究の進行は「やや遅れている」に位置付けられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度に引き続き保護者支援の調査を継続するとともに、保護者グループの研究協力を募り、調査を行う予定である。具体的には、保護者グループに対する支援活動を行っている研究協力者をリクルートし、そこからデータへのアクセスを試みる。これらの調査結果から、保護者支援に関係するディスコースのリスト化・ディスコースの視点から行う保護者支援のモデル化をさらに進めていく。具体的な分析方法としては、平成29・30年度と同様、個別の事例を分析しつつ、複数の分析結果を統合することも行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主として研究代表者が研究機関を異動したため研究環境の整備等が必要となり、研究遂行に遅れが生じた。また、研究協力が可能な保護者グループを見つけることができなかった。翌年度は、主として研究遂行実施に伴う研究協力者への謝金、研究発表旅費、研究論文執筆の英文校閲に使用する予定である。
|