研究課題/領域番号 |
17K13934
|
研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
綾城 初穂 駒沢女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60755213)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 保護者支援 / ディスコース / ナラティヴセラピー |
研究実績の概要 |
【研究目的】価値観が多様化する現代日本においては、社会文化的文脈(ディスコース)を加味した保護者支援アプローチが求められる。本研究では、このアプローチを開発することを目的した。平成31年度は、A)平成30年度に引き続き具体的な保護者支援を通しての調査を行うとともに、B)保護者グループの調査によって保護者支援に関係するディスコースのリスト化を進め、C)ディスコースの視点から行う保護者支援のモデル化を目指すことを予定した。 【実施内容】A)にあたる具体的な保護者支援については、成功事例の縦断的データを複数取得することができた。B)については、保護者コミュニティをリクルートできなかったものの、自由記述データを保護者400名から取得できた。C) については、保護者支援に有益と思われる支援モデルについての検討と学会発表を行った。さらに本研究にかかわる査読論文も本年度刊行された。 【研究成果】保護者支援の縦断調査の結果、平成30年度のものと合わせ約125時間分のデータが収集された。一部は支援が継続されているため来年度も引き続き調査を続ける必要があるが、現時点で得られたデータからは、平成30年度の知見と同様、支援の展開とともに「子ども中心主義」ディスコースがみられることが示唆されている。また、支援方法の一つとして、ナラティヴセラピーの「外在化」と修復的実践の考えを融合したtwo-circles methodが有益であることも示唆され、学会発表が行われた。さらに保護者400名を対象に行った調査からは、複数の保護者ディスコースが見いだされるとともに、そうしたディスコースが親子関係よりも人格属性と結びつきやすいこと、「理想的な親」に比べ「理想的ではない親」の方が支配的ディスコースの影響を受けやすいこと、父親に比べ母親の方が様々なディスコースと結び付けられやすいことも示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のうち、A)については、一部支援継続中のものがあり、研究に利用可能な形としてデータを取得するのにまだ時間を要する。また、B)については、ディスコースのリスト化について目途が立ったものの、より詳細な検討にはまだ時間が必要である。C)については、平成30年度に指摘した子ども中心主義ディスコースの有益性に加えて、支配的ディスコース(保護者に否定的に働き得るディスコース)からオルタナティブ・ディスコース(支配的ディスコースの代わりになるディスコース)への変化をもたらす支援プロセスやその具体的方法についても示唆され始めているが、A)と同様の理由で本格的分析に至っていない。 このように当該年度の計画は遅れているものの、分析可能なデータが大量に収集できており、実施内容で記した通り分析も進み、成果についてのアウトプットも行えている。このことから、本研究の進行は「やや遅れている」に位置付けられる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、平成31年度に引き続き保護者支援の調査を継続するとともに、保護者支援に関係するディスコースのリスト化と、多数の成功事例の分析結果を統合した保護者支援モデルの構築を行う。また、コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、当初予定されていた保護者グループに対するインタビューは取りやめ、インターネットを用いた調査(対面による調査あるいは自由記述による調査)を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に研究代表者が研究機関を異動したため研究環境の整備等が必要となり、以降の研究遂行に遅れが生じた。また、コロナウイルス感染症の問題から、保護者グループへのインタビューについても断念せざるを得ず、実施可能な別の調査が必要となる。令和2年度は、主としてデータ入力・整理に伴う謝金(人件費やデータ整理用デバイス)、追加調査費用、研究発表に伴う費用(研究論文執筆の英文校閲費など)に使用する予定である。学会発表に関する旅費の使用については、コロナウイルス感染症の動向を見て判断する。
|