研究課題
本研究の目的は、発達障害傾向のある大学生、大学院生の能力発揮促進に寄与する要因を明らかにし、能力発揮促進のための支援方略を検討することである。これまで、基礎的データとして、大学生や就労者に対し、発達障害傾向と適応との関連に関する調査を行ってきた。その中で、発達障害傾向が高くても、適応がよい一群の存在があらためて確認された。2020年度には、発達障害傾向のある学生についての基礎的データをさらに収集するため、学生約4400名(うち、大学院生約1000名)に調査を行った。調査の結果から、発達障害傾向のある学生の適応を予測する要因として、ソーシャルサポートなどが見いだされた。発達障害傾向が高い場合には、ソーシャルサポートが減少することが予測され、発達障害傾向が高い大学院生が能力を発揮するための地盤づくりとして、ソーシャルサポートを得る機会を増やす支援の重要性がうかがわれた。また、コロナウイルスの流行による、発達障害傾向の高い学生の適応状態の変化に関する分析も行った。その結果、コロナウイルスの流行下においては発達障害傾向が高い学生の適応状態はさらに悪化し、危機的な水準に達している場合もあった。ただし、ADHD傾向の高い学生の場合には、コロナウイルス流行の影響をうけにくいことが示された。また、対面でのインタビュー調査や検査はコロナウイルス流行のために困難となったため、Zoom等を用いた面接調査を、予定数のごく一部ではあるものの行った。調査の結果は整理中である。
3: やや遅れている
コロナウイルス流行によって、対面でのインタビュー調査が難しくなったために、インタビューデータの収集が困難になった。Zoom等を用いた調査に切り替えて実施しているものの、データ数の確保が未だ不足しており、追加募集等を余儀なくされている。
Zoom等を用いたインタビュー調査によって追加データを得つつ、遠隔でも可能なWebアンケート形式の調査を新たに計画、追加で行い、インタビューによって明らかにする予定であった部分を補完していく。
新型コロナウイルス流行のために、研究成果発表がリモートとなったことから旅費が不要になった。また、対面でのインタビューが困難であることから、データ整理のための人件費を支出しなかった。2021年度の状況は未だ不明であるが、研究発表の機会があれば出張費として使用予定であるほか、リモート開催のみで旅費が不要である場合には、研究発表の機会を増やすことを検討する。また、インタビューデータが得られたり、代替のWebアンケートデータが得られ次第、データ整理のための人件費を支出する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
学校心理学研究
巻: 20 ページ: 47~54
10.24583/jjspedit.20.1_47