研究課題/領域番号 |
17K13937
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
望月 直人 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 准教授 (20572283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 児童自立支援施設 / アフターケア / 社会的養護 / 家庭復帰以外の支援 |
研究実績の概要 |
従来の実践研究により,愛着障害だけでなく,発達障害,解離(トラウマ)のある子どもが多くいることが明らかになった。本年度も研究FBを行うことで,これらの視点が当たり前に支援に活かされるようになった。 他方,研究Ⅰ・Ⅱの実施に向け児童自立支援施設を中心に社会的養護全般のアフターケアの研究レビューを行った。その結果,我が国では児童福祉学や家族社会学で検討されているが,心理学の文脈ではほとんど検討されていないことが明らかになった。児童福祉法改正によりアフターケアが施設の目的として明確化されてから実践や研究は増えている。一般児童・青年に比して、施設退所者の進学率の低さや就業の困難さ,その前提となる家庭復帰の支援方法などが課題とされている。しかし現状では,社会的養護という公的制度のシステムであっても機能しているとは言い難いとされる。さらに,欧米とは異なり日本では社会的養護の主流が施設養護であること,その背景には「家庭復帰前提型支援(2014, 藤間)」が施策の中心となっていることもあり,家庭復帰以外の支援は十分に検討されていない。 家庭復帰を前提とすると児童自立支援施設退所後の子どもの生活は,逆境的環境に加え,外在化問題のリスクのある行動特徴からも周囲と軋轢を生みやすいため,より厳しい状況となる。つまり,自ら環境を悪化していくリスクが高く,困難も山積されることが推察される。河合ら(2016)は,高校進学後の社会適応を質的研究を通して明らかにしているが、家庭復帰支援を前提とした文脈で言及されていること,高校進学者以外については検討されていない点で課題が残る。以上により,児童自立支援施設の包括的なアフターケアについて考えるには,家庭状況、子どもの状況に合わせた複数の支援形態が不可欠である。その前提として,家庭復帰以外の里親養育等の支援形態の効果を明確に示していく必要もあるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
児童自立支援施設のアフターケアの実践や研究には,当該施設だけでなく児童相談所や関係施設の協力が必要なこと,また対象家族の理解が不可欠である。研究代表者が行うそのコーディネートにおいて,本年度は当初予定されていたよりも困難さが生じたため,実態調査(研究Ⅰ)や退所児童の追跡研究(研究Ⅱ)を遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で報告したように,初年度は様々な事情により研究協力施設との調整がうまくいかず,計画通りに研究遂行を進められなかった。そのため,当初の研究施設だけでなく,他施設にも研究協力の依頼を検討した。その結果,児童自立支援施設とのコネクションのある専門家の協力も得ることが可能となり,次年度は中国地区の6箇所の児童自立支援施設と連携した研究を遂行する予定である。当初の協力施設とも連携しつつ新たな施設の協力も得ながら,施設側と研究代表者の共同研究として実態調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状況にも記載しているように,初年度は研究実施するための協力機関との調整が様々な理由で困難となっていた。その結果,初年度に計画していた実態調査や追跡調査がほとんど実施できなかったことが主な理由である。次年度以降は,中国地区の児童自立支援施設の実践研究プロジェクトに参画が決まるなど,当初予定していた調査を実施するための研究体制を構築したので,その経費に使用する予定である。
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