研究課題/領域番号 |
17K13937
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
望月 直人 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 特任准教授(常勤) (20572283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 児童自立支援施設 / 発達障害 / 愛着障害 / アフターケア / 教職員 / 施設職員 |
研究実績の概要 |
本年度は5施設の児童自立支援施設の施設職員,教職員を対象として,児童のインケア,リービングケア,アフターケアに必要な発達障害の理解と支援について,研究Ⅱに関するアンケート作成に向けた予備調査を実施した。同様に,研究Ⅱに関するアンケート作成に向けて,1施設のアフターケア担当者4名に対して,インタビュー調査も行った。 アンケート結果から,教職員と施設職員の入所児童への主観的な見立てを比較すると,施設職員の方が学校職員よりも愛着障害の児童が多いと捉える傾向があることが明らかとなった(t(123)=1.72 p<.10)。また,統計的有意差は出なかったものの,児童への主観的見立ての平均値からは,,特異的学習症(SLD)を除く発達障害(自閉スペクトラム症,注意欠如多動症,知的障害)についても同様の結果であることが示唆された。生活場面で多く接する施設職員ということやSLDについては学校場面で顕著な障害ということが関係していると思われた。 リービングケアやアフターケアについて,自由記述からは以下が明らかとなった。児童の発達障害と関係なく支援が困難とされるが,発達障害の問題がさらに課題を複雑にしていること,具体的には,保護者自身の児童の特性理解の欠如や保護者自身の発達障害傾向が支援度の困難さに強く影響していることが示唆された。一方で,施設ごとに児童の入所人数や支援形態が異なることなどを起因として,リービングケアやアフターケアについても施設によっては,十分に機能していない実態が明らかとなった。そうした結果,家庭環境が改善していない段階での退所とならざるをえない場合など,アフターケアの重要性は高まるが,現状では十分に対応が取られていないことが予想される。支援員の配置人数など,施設運営や行政側の施設の構造上の問題も大きい実態が改めて浮き彫りとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
児童自立支援施設における,リービングケア,アフターケアの実践や研究には,当該施設に加えて,児童相談所や関係施設の協力が必要なこと,また対象となる家族の理解と同意が不可欠である。研究協力施設に継続して研究協力の依頼を行っているが,研究協力施設が増えたこともあり,現実的な計画実施に向けて同意が得られていない。そのため,前年度同様に退所児童の追跡研究(研究II)を遂行することができなかった。そのため,研究ⅠとⅢについて研究を進めることができず,進捗が遅くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査の段階ではあるが,6箇所の児童自立支援施設と研究協力の関係を構築し,本格的な実態調査に向けたデータ収集が可能となった点は本研究の進捗にプラスになったと思われる。ただし,退所児童の追跡研究(研究Ⅱ)や実践研究(研究Ⅲ)については,6箇所の施設と協議しながらになるが,関係機関や家族との調整も必要になるため慎重な交渉が必要となる。他方,施設のアフターケアに関する実態調査に向けた予備調査は,5つの研究協力施設で実施することができており,次年度に本格的に実施できる見込みである。なお,本研究計画の変更が更に続くようであれば,研究協力者にも相談しながら改善策を協議して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状況でも報告しているが,研究Ⅱの追跡研究が実施できなかったため,旅費,人件費,物品費での使用が計画よりも大きく下回ったことによる。ただし,本年度より新たに5箇所の児童自立支援施設との研究協力の関係が構築できた。本研究に関連する内容についても,少しずつ研究実施に向けた準備が進んでいる。次年度については,研究Ⅰや研究Ⅲに関する研究経費,ならびに研究成果の発表に関する旅費に使用する予定である。
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