研究実績の概要 |
2020年度について, 新型コロナウィルスの影響で研究協力施設を訪問することができず, 調査に関する協議ができなかったため,調査を進めることができなかった。そのため, 施設での研究活動が全く実施できなかったが, 研究資料や文献のレビューを行い,次年度に向けて半構造化面接のインタビュー項目,アンケート項目の選定を行った。その一環として, 不安障害やトラウマとの関連が深い高敏感者(Highly Sensitive Person:HSP)について, 自閉症スペクトラム(以下, ASD)との判別するための要因について検討した。概要を以下に記す。 HSPとASDはいずれも感覚の敏感さをもつため,両者の併存や判別が議論となる。教養科目・教職科目の心理学を受講 する大学生141名(男性53名, 女性87名, その他1名, M=21.6歳, SD=3.15) に, ①HSP尺度短縮版 , ②エンパス尺度, ③自閉性指数, ④認知的フュージョン質問紙, ⑤心理的柔軟性, ⑥対人反応性指標を実施 した。重回帰分析の結果, AQ に対しては, 男女共に共感( 情動直感・想像性) の係数が負であり, CFQ は関連していなかっ た。HSPに対しては,予想に反して,男性においてCFQ の係数が正で, 共感(共感的関心)の係数が負であった。なおHSP尺度とASDは正の相関があり(r = .25), 両者の併存を視野に入れたさらなる検討が必要であると推察された。これらの結果から, 共感性の高低による両者の区別は可能と示唆されるが, 思考の硬さという特徴では判別が困難であることが明らかとなった。本研究との関連では, 児童自立支援施設入所児においても発達障害とトラウマの併存や判別が議論となることがある。HSPを鍵として,両者を判別し, 個々に合わせたアフターケア・プログラムの開発が必要となるだろう。
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