2022年度について,前年度同様,新型コロナウィルスの影響を受けて,研究協力施設への訪問はできなかったが,ようやく年度末の時期にオンライン体制が準備できたため,協議に参加が可能となった。しかし,調査に関して協議再開を検討したところで,研究期間終了となってしまった。したがって, 実質的な調査や実践研究が遂行できなかったため,文献資料をもとに設定したアンケート項目の精査を継続しつつ,児童自立支援施設の退所後の支援や児童自立支援施設入所児童に関連する文献を検討した。その結果,児童自立支援施設には,発達障害傾向のある児童も多くみられることが明らかとなっているため,彼らの退園後の生活適応の安定には,自己理解支援の重要性が示唆された。なお,先行研究からASD者の自己理解支援は臨床現場では実践されてきているが、研究の蓄積は浅く、量的研究・質的研究ともに十分に検討されているとはいえないことが明らかとなった。 研究機関全体を通して,研究協力施設との調整が当初の計画よりも遅くなりながらも,少しずつ進めていたところで新型コロナウィルスの影響を直接的にも間接的にも大きな影響を受けた。社会的状況の変化が2022年度に変化する兆しがあり,研究機関を延長したものの,保護者や児童に直接的にアプローチする研究Ⅱ,研究Ⅲについては遂行することができなかった。したがって,アフターケア・プログラムの開発に至らず,当初の研究計画に基づく研究成果としては2019年度までの成果のみとなった。施設職員へのインタビュー調査からは,アフターケアについて,必要な業務と認識されている。一方で,組織的な対応が現状の体制では難しいことが明らかとなり,現場レベルではなく厚労省はじめ自治体の大きな枠組みでの抜本的な改革が急務であると言えるだろう。
|