前年度に行った教育プログラムの効果検証に向けた解析を進め、日本老年行動科学会で成果の発表を行った。 解析は54名の参加者のうち、研究からの離脱者及びプログラムの各回の確認テストの受講率が低かった者15名を除いた39名(介入群23名、統制群16名)のデータを対象とした。介入群と統制群で年齢や教育歴などの基本属性に有意差は見られなかった。学習にあたって介入群23名が主に使用したデバイスはスマートフォンが最も多く、1単元の学習時間は30分~1時間程度の者が多かった。介入前後の認知症の知識得点の変化量を従属変数として、内発的動機づけ尺度を共変量とした共分散分析を行ったところ、グループの主効果が有意傾向であったが、フォローアップ時には有意差は見られなかった。一方、教材に取り組んだ感想は、「とても役に立った」と「役に立った」と回答した者で100%となり、役に立たなかったと回答した者はいなかった。本研究で開発したプログラムは、オンラインのため時間や場所を選ばず行うことができ、特段の有害性も想定されないため、実用性は高いと考えられる。一方、研究デザインとして無作為化ができておらず、サンプルサイズも小さいためプログラムの効果については更なる検証が必要である。また、離脱者もみられることから、継続性についても課題として挙げられる。参加意欲を促進するための工夫を考えると共に、継続を阻害する要因の解明も今後必要であると考えられる。 また、社会福祉法人大阪府社会福祉事業団と共同で行っていた事例検討を基にした事例集を出版した。本事例集の内容をプログラムの中に取り入れることで、より現場の実態に即した教材開発が実現できると考えられる。
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