最終年度は、これまでに収集した遠隔心理支援のケース分析を行なった。実施した研究の成果は、その一部を、2点の論文に報告し、1編の書籍執筆に取り組んでいる。 遠隔心理支援は、インターネットを通じて提供される場合が多く、これをeメンタルヘルス(eMental health)という。eメンタルヘルスでは、遠隔心理療法のみならず、心理教育やセルフケアの情報提供を含めて包括的にプログラム化されることが重要である。そのような包括性のあるeメンタルヘルスのケアサービスは、現場に効果的に根付くことが重要であり、そのためには効果の検証と改善が必須である。そこで、開発したeメンタルヘルスサービスの運用結果の効果測定を目的として、利用者の理解度と評価を検討した。認知と行動の変容に焦点を当てる認知行動療法に基づく心理教育とセルフケアツールの学習内容に限定して分析し、今後の課題とプログラムの改善点を検討し、報告した。 遠隔心理療法は、また、階層的なプログラムとして提供されることが重要である。第1次は利用者によるセルフケア、第2次はヒューマンケアサービスの従事者(医療・福祉従事者等)によるサポート、第3次は臨床心理士や公認心理師による遠隔心理療法の提供である。そこで、遠隔心理療法のTipsを用いてケアサービスの従事者を対象とした遠隔コンサルテーションのデータを分析し、遠隔コンサルテーションの実際を報告した。 研究期間全体を通して、うつ病予防プログラムの開発を主眼とした遠隔心理支援プログラムのプロトタイプを構築でき、高齢者介護や障害福祉の現場に適用可能な知見を蓄積することができた。
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