研究課題
本研究では,老いを自覚しそれに適応するプロセスを明らかにすることを目的に,地域在住高齢者と,対照群として大学生を対象に,それぞれ5年間の縦断調査を行った。測定内容は投影法および質問紙法による性格検査,心理的独立性と老いへの再適応からなる心理的自律性尺度,精神的健康,認知機能,生活状況,運動機能などであった。主な結果として①高齢者の心理的自律性,精神的健康,認知機能,運動機能は直線的な変化を示さなかった,②運動機能が高いまま維持されている群は心理的独立性が精神的健康の維持に有効で,運動機能が低下した群は老いへの再適応が有効であった。また,投影法による性格検査の標準化を目指したが,③マニュアルを日本人の反応に基づいて修正する必要があること,④そもそも高齢者と大学生では一般的な反応が異なることも明らかになった。以上の結果は,高齢者の健やかな老いや安定した対人関係の一助となるものであり,今後はこれらの知見に基づいたプログラムの開発と効果検証を行う予定である。また,高齢者を対象にした性格検査は,長寿国のわが国においてニーズが高まっており,引き続き標準化に向けた検討が求められる。本研究の限界として,地域在住高齢者を対象に縦断調査を行ったため,分析対象者が運動機能が高い者に偏ったことが挙げられる。本研究の結果から,運動機能が低下した場合に初めて老いへの再適応が精神的健康に有効であることが示唆されたため,今後は施設入所者やフレイルを対象にした検討が必要であろう。
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