昨年度までに実施した心理教育プログラムの結果の最終的な分析を行った。心理教育プログラムと2年間のフォローアップを完遂した47名の入院回数は、参加前後で有意に低下したことが確認された。参加者のセルフエフィカシーは参加後に有意に向上したが、この変化は観察期間中に入院があった群には認められなかった。また、入院有群は、入院無群に比べて有意に年齢が高く、参加前2年間の入院回数が多く、参加前のHAMD得点が低く、参加後のセルフエフィカシーが低い等の特徴が見られた。本結果については論文投稿中である。 心理教育参加者の主観的体験を明らかにするため、心理教育参加後のアンケートを分析した。その結果、心理教育の参加者は平均罹病期間が16.5±9.3年あるにも関わらず、十分に自身の病気についての知識を得られていないことが示唆された。特に,再発予防に関する知識は参加者の評価が高く、またストレス対処に関する知識や問題解決法のように疾患に限定されない日常的な困りごとへの対処法のニーズが高かった。規則正しい睡眠や生活習慣に関する知識も、生活に取り入れやすいと評価されていた。また、正しい知識を得られたことと同等以上に、同じ病気の人と出会い体験を共有できたことをメリットとして挙げた人が多かった。終了2年後の時点では、参加者は自分の病気に向き合い自分を客観的に見られるようになっており、疾病管理に必要な生活行動が行えるようになり、良い調子を保てるようになったと感じている者も少なくないことがわかった。 参加者へのインタビュー調査を行った結果を分析した。参加者は、疾患の情報を得て同病他患のリアルな声を聞くことで自己理解を深め、対処法の実践を通じて自己コントロール感を高めていったことが示唆された。詳細な変化のプロセスについては今後分析する予定である。
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