グローバル化が進んでいるにも関わらず、日本の臨床心理学では国際結婚家庭の構成員(①国際結婚家庭の親の立場にある者、および、②子の立場にある者)をはじめ、社会的マイノリティの実態は充分に明らかになっておらず、かれらに対する支援が困難な状況にある。本研究は、国際結婚家庭の構成員に対する心理援助を通して、①国際結婚家庭の構成員の課題および支援のあり方、②日本にあった多文化間カウンセリングのあり方、③事例研究を軸とした実践にもとづく研究法のあり方を示すことを目的とした。 2021年度はまず、日本心理臨床学会第40回大会において、「日本のなかの世界:文化的他者の臨床」という構造化ディスカッショングループに登壇した。そこでは、これまでの研究成果と実践経験を踏まえながら、「どのような対象に対して、どのような実践活動を行っているか」「『文化的他者』の特徴は、どのような点にあるか」「『文化的他者』を支援する者をいかに育てられるか」について話題提供を行った。また、この領域で活躍している研究者/実践家との公開ディスカッションを行った。 また2021年度は、日本にあった多文化間カウンセリングのあり方について検討する際に鍵となる「文化的に多様な人々に関わる能力(multicultural competence)」について論考を執筆した。そこでは、文化的に多様な人々に関わる能力の要点を、日本の文脈と結び付けながら解説した。具体的には、文化的に多様な人々に関わる能力の3つの構成要素である、①他者についての「知識(knowledge)」、②自分自身に対する「気づき(awareness)」、③行動に移す上での「スキル(skills)」について説明を行った なお、新型コロナ・ウィルスの感染拡大が収まらない状況であったため、国際結婚家庭の構成員に対する心理援助にもとづく研究の実施は見合わせた。
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